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G.G.佐藤が明かす“あの落球”本当の理由…大会前にケガ→激痛も“言えなかった”守備の不安「注射を打って、座薬も入れて、胃薬も飲んだ」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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photograph byTakashi Shimizu

posted2023/02/27 11:00

G.G.佐藤が明かす“あの落球”本当の理由…大会前にケガ→激痛も“言えなかった”守備の不安「注射を打って、座薬も入れて、胃薬も飲んだ」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

「今でも悔しいし、立ち直れたのかはわかりません」。あの北京五輪から15年、G.G.佐藤がインタビューに応じた

「来てたのかな。見てない(笑)。僕はあの頃、それくらい調子に乗ってたんでしょうね」

 同年のオールスターファン投票では両リーグ合わせて最多の36万7837票を獲得。五輪代表で先発投手部門のダルビッシュ有や田中将大だけでなく、同じ外野手部門の稲葉篤紀や青木宣親などを超える得票数だった。

「外野はどこでも同じ」の空気

 それだけではない。選手間投票でも476票を集めて両リーグ1位に。3人の名前を挙げられる外野手とはいえ、ライバルたちにも認められる結果を残していた。

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「代表メンバーを見たら、ライトは稲葉さんでしょうから、自分がレフトかなとは思いました。ただ、発表の時に守備位置の話はなかったですね。自分自身、レフトもライトと一緒かなと考えていたし、守った経験もあったので大丈夫だろうと。安易な気持ちがありました」

 2006年、西武不動の5番・和田一浩がWBCで抜けていた間、G.G.はオープン戦17試合中12試合レフトで先発出場。開幕カードでも、指名打者に入った和田に代わってレフトで起用されていた。五輪前、G.G.のレフトを不安視する声は上がっていなかった。本人だけではなく、周囲にも“外野はどこでも同じ”という空気があった。

「オールスター(第1戦)でレフト守ってるんですか? 記憶にないな。メンバー発表があってから合宿前までレフトの練習はしていないと思います」

 準備不足――。落球の序章はここから始まっていた。五輪初戦まで2週間を切った8月1日、代表メンバーが初めて顔を揃える。この時、ミーティングで初対面の星野監督から「レフトで行くぞ」と伝えられた。翌日、ジャイアンツ球場で練習がスタート。G.G.は視察に訪れた憧れの長嶋茂雄に直立不動で挨拶し、日本代表の実感が湧いてきた。

 その直後、運命の歯車が狂い始める。シートノックで二塁へ返球した際、右肩に激痛が走った。

「言えなかった」大会前の“ケガ”

「強肩をアピールしようと、慣れていない国際球で思い切り投げてしまった。マイナーリーグの時と同じボールだから、そこまで深く考えてなかった。武器の肩を痛めて、内野への返球が不安になりました」

 首脳陣に右肩の状態を伝えたのか。

「言いたいけど、言えなかった。トレーナーには報告しましたけどね。出たい気持ちも強かったですし。注射を打って、座薬も入れて、胃薬も飲んだ。薬の飲み過ぎでクラクラしました。一時的にだけでも、痛みを消したかった。パ・リーグ選抜との壮行試合では、レフト線の打球処理をミスして二塁打にしてしまった。不安がどんどん増していきました」

【次ページ】 あの準決勝・韓国戦…落球の前兆

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