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桑田真澄18歳「ボク払います」ポケットから出した“驚きの金額”…「彼女に会いたくて」寮の門限で攻防、巨人レギュラー争いの内情…巨人OBが語る寮生活
posted2025/02/16 11:04

PL学園から巨人に入団した桑田真澄。写真はプロ2年目の1987年撮影
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph by
Kazuhito Yamada
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食事を終えると、ルーキーの桑田真澄が「僕払いますよ」とポケットに手を遣った。藤岡寛生が「いや、いいよ」と制すると、驚きの光景が目に入った。
「桑田は財布を持たず、ポッケにお札を曲げたまま入れていました。『いくらあるんだ?』と聞いたら、『とりあえず50万ぐらいあります』って。焼肉食べるのに50万も掛かるわけないですよね(笑)。いつも現金をそのまま持ち歩いているというから、『それはいかんぞ。財布ぐらい買え。金あるんだから』と言いましたけどね」
寮の門限をめぐる“攻防”
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豪快さでは、藤岡も負けていなかった。平日21時、日曜22時の門限を何度も破っていた。藤本健作寮長はあの手この手で対策を講じた。夜になると、非常階段に通じるドアの横側に『外出厳禁』という紙を貼った。開けたら破けてしまうため、すぐにバレる仕組みになっていた。
「よく見たら、ノリ付けされていた。どないしよう……と考えた末に、ドライヤーで横から風を送ればいいんやと思い付いた。溶け始めたらカッターナイフを伸ばして、シュシュシュとノリの部分を切る。紙を綺麗に残したまま出て、帰ってきたら貼り直した。『よし! これでバレないやろ!』と思ったら、次の日『誰や剥がしたの!!』って怒鳴られましたけどね」
ドアを突破されるなら、非常階段で対策を練るしかない――。そう考えた寮長は有刺鉄線を階段中に張り巡らした。それでも、藤岡は死に物狂いで突破した。
「彼女に会いに行きたかったんです。隙間に足を伸ばしていけば、なんとか出口に辿り着ける。一度、最後の1段で右足の内側が引っかかって、ズボンがベリッと破れました。『こんな格好でデート行かれへんわ』と思って、部屋に戻ってから再挑戦しました。別の意味で、非常階段になってましたね」
現れた救世主「ノコちゃん」
遊びたい盛りの20歳前後の寮生たちに夜9時の門限はあまりに早かった。都心の繁華街と寮は1時間ほどの距離がある。
「8時前になると、ソワソワしますからね。小田急の読売ランド前駅に8時40分に着かなあかんのです。駅前にタクシーがいないので、山道を駆け上がらないといけない。飲んで帰ってくると、辛いんですよ」
門限を破ると罰金30万円、丸坊主、電話当番1カ月という罰則が待っていた。そんな折、ヤング・ジャイアンツに“ノコちゃん”という救世主が現れる。