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G.G.佐藤が明かす“あの落球”本当の理由…大会前にケガ→激痛も“言えなかった”守備の不安「注射を打って、座薬も入れて、胃薬も飲んだ」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byTakashi Shimizu
posted2023/02/27 11:00
「今でも悔しいし、立ち直れたのかはわかりません」。あの北京五輪から15年、G.G.佐藤がインタビューに応じた
北京へ向かう飛行機の中で、歳の近い村田修一に「守備で足を引っ張りたくない」と素直な気持ちを打ち明けた。代表選出時には考えられなかったほど、マイナス思考に陥っていた。
西岡や川崎、新井貴浩など故障者続出の日本は予選リーグで韓国、キューバ、アメリカの3カ国に敗れた。それでも、準決勝にコマを進めて宿敵・韓国と対戦する。G.G.は「7番・レフト」でスタメンに名を連ねた。
あの準決勝・韓国戦…落球の前兆
悪夢には必ず前兆がある。2対0とリードした4回裏、韓国先頭のイ・ヨンギュがレフト線に運ぶ。左に切れていく打球に対し、G.G.は直線的に走って“線”ではなく“点”で処理しようとする。これが重心の高さに繋がってトンネルとなり、イ・ヨンギュは二塁へ到達した。
「なんでこの打球が捕れないのかと自分を疑ってしまった。普段からレフトを守っていれば、深めに回り込んでいたと思います。肩に不安があったので早く取って返球しなければと焦り、目を切るのも早かった。レフトの打球の特徴を本職の選手に聞いておけば良かった」
G.G.のトンネルをきっかけに、日本は1点を返される。2対2の同点で迎えた8回裏、悲劇が起こった。岩瀬仁紀が4番のイ・スンヨプに勝ち越し2ランを浴びる。そして、代わった涌井秀章から6番のコ・ヨンミンが左中間に大きく打ち上げた打球を、レフトのG.G.が落球してしまった。
「経験不足から起こった4回裏のトンネルで全ての自信を失った。普通のゴロを処理できないのに、難しい打球がきたら捕れる気がしなかったんです。野球人生で初めて『打球が飛んできてほしくない』と心から思っていました。それが、最大の原因だと思います」
落球の間に一塁ランナーがホームイン。涌井が8番のカン・ミンホにセンターオーバーの二塁打を浴び、4点のリードが開いた。G.G.のエラーは全て失点に結びつき、試合はそのまま敗れた。
「僕のエラーで負けたのに、チームメイトや星野監督は決して責めなかった。でも、唯一自分だけが自分を許せなかった。時には、環境や他人のせいにするくらいのメンタルが必要なのかもしれません。自分を許せる人間って強いですよ」
「G.G.さん明日絶対使われるよ」
元来、真面目な性格のG.G.は全ての責任を背負い込んでしまった。その夜、同級生の阿部慎之助と森野将彦が食事に誘ってくれた。