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G.G.佐藤が明かす“あの落球”本当の理由…大会前にケガ→激痛も“言えなかった”守備の不安「注射を打って、座薬も入れて、胃薬も飲んだ」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byTakashi Shimizu
posted2023/02/27 11:00
「今でも悔しいし、立ち直れたのかはわかりません」。あの北京五輪から15年、G.G.佐藤がインタビューに応じた
「『おまえのせいだけじゃないよ』とかばってくれて、気持ちが楽になりました。2人とも『さすがに明日はベンチだよ』と言ってくれて、安心して眠れたんですよ。あの状態でスタメンなんて考えられない。でも、準決勝が終わってすぐ、藤川(球児)君は『星野さんの性格知ってるけど、G.G.さん明日絶対使われるよ』って言いに来てくれたらしいです。塞(ふさ)ぎ込んでいたので、全く記憶にないんですが」
2002年、阪神の藤川は星野監督の元でプロ初勝利を挙げるまで9度も先発のチャンスを与えられていた。翌年リリーフに転向すると、失敗した翌日に登板した経験もあった。藤川の予言は的中する。アメリカとの3位決定戦に向かう翌朝、G.G.は宿舎に掲示されたスタメン表を見て、震え上がった。
「『……俺、今日行くの?』って。昨日の紙のまま、貼り替え忘れたのかなと本気で疑いました。どんなピッチャーが先発か調べてないし、慌てて準備をした。弱気を払拭しようと、自分にスイッチを入れまくって……。それが逆効果になりました」
3位決定戦、2度目の落球
「9番・レフト」で先発出場のG.G.は3回に送りバントを決め、青木の勝ち越し3ランに結びつける。しかしその裏、またしても悲劇が起こる。先頭の1番・バーデンの打球がショート後方に飛ぶ。「オーライ! オーライ!」と大声を上げながら、G.G.はレフトから猛スピードで前進した。だが、ボールは無情にもグラブにかすって芝生に落ち、レフト方向へ転がっていった。
「冷静にショートの中島(裕之)に任せていい場面だったと思います。無理矢理スイッチを入れていましたから、自分で捕りに行ってしまった」
無謀な積極性は暴走となり、2度目の落球を生んだ。この後、1死一、二塁から先発の和田毅が4番のブラウンに同点3ランを浴びる。5回に2番手の川上憲伸が4点を奪われ、万事休す。日本は銅メダルにも届かず、4位に終わった。
宿舎に戻ると、何人もの選手がG.G.を慰めようと部屋を訪れた。しかし、チャイムを何度鳴らしても、応答がない。いったい、何が起こったのか――。
〈つづく〉
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