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元巨人選手が“寺の住職”になっていた…戦力外から7年「朝4時半起きの修行」阪神ファンだった事故犠牲者との出会い「自分が“元プロ野球選手”だと明かした」

posted2025/02/16 11:05

 
元巨人選手が“寺の住職”になっていた…戦力外から7年「朝4時半起きの修行」阪神ファンだった事故犠牲者との出会い「自分が“元プロ野球選手”だと明かした」<Number Web> photograph by Hiroki Fujioka

1984年ドラフト2位で巨人に入団した藤岡寛生さん。現在は寺の住職に

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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Hiroki Fujioka

かつて巨人からドラフト2位指名を受け、ファンの期待を背負った男は今、住職を務めていた――藤岡寛生(58歳)が明かす、戦力外通告から住職になるまで。【全3回の3回目】

◆◆◆

 長嶋茂雄監督の復帰で沸く1992年オフ、藤岡寛生はジャイアンツ球場のスタッフルームに呼ばれる。ドアを開けると球団副代表とマネージャーが座っていた。

「戦力外通告でした。シーズン中から『ああ、来年ないな』とわかりますよ。試合に出る機会がだんだん減っていきますからね。家に帰って妻に『今日、クビって言われたよ』と伝えても、別に暗い雰囲気にはならなかったですね」

入団テスト“まさかの二日酔い”

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 藤岡は日本ハムの入団テストを受けるため、鴨川の秋季キャンプに直行する。だが、突然の出来事だったため、宿舎に空きがない。同年に日本ハムへ移籍して14勝を挙げた金石昭人の1人部屋に潜り込んだ。

「金石さんはオーバーホールで来ていたんですよ。挨拶するなり、『テスト頑張れよ。おお、飯食いに行くぞ』って。もう22時を超えていましたから、『……今からですか?』と思わず聞き返してしまいました。巨人なら門限破りですけど、日本ハムでは関係なかった。『おお、飲め飲め』と勧められるままに酒を飲んでいたら、二日酔いになってしまいました。テスト期間中の1週間毎日、金石さんのお供をしました」

 球団常務から復帰した大沢啓二監督は、藤岡の肩に惚れ込んで獲得。93年6月16日のロッテ戦(千葉マリン)では同点の10回裏1死満塁、ウインタースに代わって突然、経験のないレフトに就かせた。すると、4番のホールが左翼に打ち上げる。藤岡からショートの広瀬哲朗、キャッチャーの田村藤夫と渡って併殺完成。土壇場で引き分けに持ち込んだ。

「外野の練習なんてしてないですからね。いきなり呼ばれて驚きましたよ。ただ、(打者が)こっち狙ってるなとわかったので、来る予感はあったんです」

日本ハムを戦力外…その後

 93年は控えの内野手としてチームに貢献したが、94年8月にイースタンの西武戦での守備中に走者と激突して左ほお骨を陥没骨折。視力が低下し、物が二重に見えるようになってしまった。翌年オフ、多摩川の選手寮に呼ばれ、マネージャーから「来季、契約の予定はない。他の球団に行くか?」と告げられる。限界を感じていた藤岡は「いや、もういいです。野球を辞めます」と身を引いた。

 それでも、僧侶になって実家の寺を継ぐ気は起こらなかった。

【次ページ】 試験、修行…僧侶になるまで

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