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りくりゅう「合わせるんじゃなくて、合うんだ」悩んでいた木原龍一と三浦璃来が“初めて出会った日”…本人が語る「言葉では言い表せない相性」
posted2023/04/04 11:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
フィギュアスケート・ペアの三浦璃来・木原龍一は今シーズン、輝かしい成績を残してきた。
2022年12月のグランプリファイナルではペアでは日本史上初の金メダルを獲得。先日行われた世界選手権でも日本史上初の金メダル。この2大会を含め、出場したすべての大会で優勝を果たした。
同時に、同一シーズンにおいて国際スケート連盟の主要大会すべてで優勝する「年間グランドスラム」を達成。これはフィギュアスケートの全種目を通じて、日本で初めてのことだ。「日本初」が、いくつも並ぶ。
活躍と相まって、特に世界選手権を経て三浦・木原組を知った、認識した人も少なくないだろう。長年、さまざまな意味で日本勢の苦闘が続いてきたペアにあって、歴史を塗り替え続ける2人の足跡をたどりたい。
トライアウトで最初に滑った瞬間「絶対にうまくいく」
今シーズンにとどまらず、数々の記録を打ち立てながら日本のフィギュア界の歴史を更新してきた2人がペア結成を発表したのは2019年8月のこと。それは互いの競技続行の扉を開く貴重な出会いだった。
木原はソチ五輪、平昌五輪にそれぞれ別のパートナーと出場したのち、2019年4月にペアを解消。その後、名古屋市の邦和スポーツランド(現・邦和みなと スポーツ&カルチャー)で働いていた。
「ペアをやってから最下位ばかりで、向いていないんじゃないかと思っていました」
ソチ、平昌、計3度出場した世界選手権ではショートプログラムで一定以上の順位に入れず、フリーに進めないまま大会を終えた。限界を感じていた。シングルで1シーズン出場して引退しようかと考えていた。
そのとき話があったのが、三浦とのトライアウトだった。三浦は前のパートナーとペアを解消し、次を模索していた。
そのトライアウトが転機となった。木原はこう語っている。
「最初に滑った瞬間から、『絶対にうまくいく』と確信しました」
とりわけ、技の1つであるツイストリフトをしたときの感覚がそう思わせた。ツイストリフトとは、男性スケーターが女性スケーターを頭上に投げ上げ、回転を終えて降りてくるのを受け止める技だ。そのタイミングが、初めて行ったときから100%合った。