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大学野球PRESSBACK NUMBER
「中学のとき、偏差値70あったって本当?」「本当ですよ」東大野球部が本気で誘っていた大阪桐蔭・根尾昂と“もう1人の現役プロ野球投手”
posted2022/10/15 11:04
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
JIJI PRESS
東京六大学野球では、東大には勝って当たり前。そんなふうに思っている、早稲田、慶応、法政、明治、立教のOB・OGたちは、認識を改めたほうがいい。東大野球部のレベルは確実に上がっている。なにせ、今年は東大野球部から井澤駿介投手と阿久津怜生外野手の2人がプロ志望届を提出。目下の秋季リーグ戦では、対慶応1回戦で快勝するなど、見応えのある試合を繰り広げている。そんな東大野球部の“独自のスカウト活動”を追う(全2回の1回目/#2へ)。
◆◆◆
「地方の公立進学校狙いです」
東京六大学野球リーグの中で唯一、スポーツ推薦も内部進学もない東大野球部は、他大学との圧倒的な戦力差を埋めるべく、独自のスカウト活動を展開してきた。それが昨今、ようやく花開いてきたと言えるだろう。
東大野球部OB会がボランティアとして設置したスカウト事務局の中心人物は、2013年春季から2019年秋季まで東大野球部監督を務めた浜田一志。「誰か東大野球部OBが文部科学省に入って、大学のスポーツ推薦を禁止してくれたら話は早いのですが……」と冗談交じりでぼやきつつも、彼は2008年の事務局設立から現在に至るまで、全国各地の秀才球児たちを勧誘している。
「東大野球部に入るには受験突破が必須です。そのため東大野球部のスカウト活動は、端的に言えば『東大受験のモチベーションを高める全国規模の活動』になる。黙っていても東大に多く入学してくる灘や開成などの超進学校は対象外で、基本的には地方の公立進学校狙いです」
甲子園出場経験があったり、予選大会で健闘している学校を訪ね、練習を見学するところから浜田の活動は始まる。
「野球部の監督に、東大を狙えそうな選手はいませんかと尋ねると、『おーい、そこのお前とそっちのお前、ちょっと来い』という感じで、めぼしい部員を集めてくれる。だいたい1年生の段階だと、みんな希望に燃えているから勉強熱心な子が多く、4人くらいを紹介してもらえます。学年が上がるにつれて脱落者が出て、2年生で2人、3年生で1人というところ。そんな彼らに、『文武両道の極みを目指さないか』と声をかけ、東大に行きたいと思ってもらうのです」(浜田、以下同)
このような浜田の活動の詳細は既報「『慶応は…本当に嫌いですね』東大野球部のスカウトが語る“スポーツ推薦も内部進学もない”東大の努力『夏休みは高校球児に勉強合宿で口説く』」の通りだ。努力はしっかり実を結んでおり、静岡、彦根東(滋賀)、米子東(鳥取)、東筑(福岡)などから、甲子園での試合を経験した選手が入部している。
「中学のとき、偏差値70あったって本当?」「本当ですよ」
もちろん、スカウトの場はこうした公立進学校にとどまらない。強豪私立でも、学力に秀でる選手が入部したと聞けば、本人の東大受験の可能性を探るのだ。
大阪桐蔭の根尾昂(現中日ドラゴンズ・東大受験は実現せず ※詳細はこちらの記事へ)や花巻東(岩手)の大巻将人(現東大野球部2年生)がそのパターンだが、浜田は他にも大物選手の獲得に向けて動いていた。