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「球団の評価は最後まで割れた」坂本勇人“外れ1位”指名と、岡本和真のドラ1契約金が「8000万円」で済んだウラ話を元巨人スカウトが明かす
posted2025/04/14 11:01

智弁学園時代の岡本和真。ドラフト会議で巨人に1位指名を受けて大喜び
text by

長谷川国利Kunitoshi Hasegawa
photograph by
JIJI PRESS

外れ1位は坂本にするかそれとも…
外れ1位は光星学院(現・八戸学院光星)の坂本勇人になりました。しかし、すんなりと決まっていたわけではありません。
ドラフト当日、会議場となっていたホテルの控え室でもまだ意見は割れていました。坂本の他にもう一名候補に挙がっていたのが埼玉栄の木村文紀(西武外れ1位)でした。木村はピッチャーとしても評判になっていましたが、関東担当で木村を何度も見ていた私は、パワーもあって足、肩もあり、個人的には野手、ショートとして育ててみたら面白いと評価していました。
坂本は春の選抜でも良かったのですが、評価を上げたのはその後の東北大会でした。4試合でホームランを4本打ち、それで一気に巨人の中でも名前が挙がってきました。担当スカウトは大森剛。大森は誰よりも坂本を高く評価していました。
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ただ、彼は光る選手を見つけ出す職人的なタイプのスカウトで、いわゆる「営業」的な人付き合いというか、人間関係の構築があまり得意なタイプのスカウトではありませんでした。もうひとつ関係者との関係性を築けないでいるということで、同校の金沢成奉監督(現・明秀日立監督)と私が以前からお付き合いがあった関係で、「一度行ってきてほしい」と山下部長に言われて八戸まで行ったこともありました。
外れ1位を坂本にした“決定的評価”とは
私が訪れたのはちょうど春の東北大会が終わった後。夏の大会に向けて追い込んでいる時期で、坂本も相当疲れていたようでした。ショートとしてはスローイングが抜群に良かった一方で、バッティングはスイングに柔らかさはあるもののドアスイング気味になっていて、正直東北大会でそんな凄い記録を作ったようなバッターには見えませんでした。
私が坂本の練習で見たのは結局このときの一回だけ。坂本の状態が落ちていたこともあり木村の方が良く見えました。
球団内の2人の評価も最後まで割れました。