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「中学のとき、偏差値70あったって本当?」「本当ですよ」東大野球部が本気で誘っていた大阪桐蔭・根尾昂と“もう1人の現役プロ野球投手” 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph byJIJI PRESS

posted2022/10/15 11:04

「中学のとき、偏差値70あったって本当?」「本当ですよ」東大野球部が本気で誘っていた大阪桐蔭・根尾昂と“もう1人の現役プロ野球投手”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

大阪桐蔭から2018年ドラフト1位で中日入りした根尾昂。中学時代の成績はオール5、その文武両道ぶりに東大野球部も早くから注目していた

 その選手とは、2018年にドラフト3位で千葉ロッテマリーンズに指名され、現在は先発投手として活躍する小島和哉(早稲田大)だ。高校時代は2年生エースとして浦和学院(埼玉)をセンバツ優勝に導き、大学4年間では通算22勝、防御率2.37の好投手である。

「僕が知っている限りでは、東大からプロ入りした宮台康平(現東京ヤクルトスワローズ)はともかくとして、小島くんはいまのプロ野球界で、根尾くんとツートップを張るくらい偏差値は高いでしょう。彼が大学生のとき、グラウンドで直接話す機会があって、聞いてみたんですよ。『中学のとき、偏差値70あったって本当なの?』と。彼はすごく自然な感じで『本当ですよ』と返事していました。彼は中学時代から、埼玉にすごく野球がうまくて頭がいい子がいると噂で、僕としては、埼玉トップの進学校・県立浦和高校に入って、ぜひ東大に来てほしかった」

 だが、浜田の思いをよそに、小島は同じ浦和でも浦和学院に進んだ。

「小島くんが高校に入学した2012年の11月に僕は東大野球部の監督に就任したんですが、その頃、浦和学院の森士監督と知り合いまして、当然小島くんの話をしました。小島くんは頭がいいらしいけど、東大に来る可能性はないのですかと。森監督の答えは、『ゼロ%』でした。大学時代の小島くんも、『自分は野球で生きると決めて、浦和学院に入った』と言ってましたし、たしかに彼が高校1年生冬のあのタイミングで、東大受験の可能性を探るのは、諦めるしかなかった」

 1年生の冬では遅かった。ということは、もっと早く接触していれば目があったかもしれないと考えるのが浜田である。

「あと2年早く野球部の監督に就いてスカウトの実績を積んで、高校野球関係者や中学のボーイズ、シニアの指導者とのパイプを作っておきたかった。そうすれば、小島くんのケースも、違った展開があったかもしれないと思うんです。中学時代の小島くんに接触し、指導者の方などに『東大野球部監督の浜田ですが……』と持ちかけていたら、可能性はあったんじゃないでしょうか。小島くんの存在を知った頃の僕は、単なるOBのボランティアですからね。大学野球部の監督がウチにきてほしいと声をかけるのと、ただのOBが声をかけるのとでは重みが全然違いますよ」

「ほとんどは高校野球の監督たちとの飲み会です」

 スカウトを始めたばかりの頃の浜田は、高校野球関係者と接触する際、まるで「消防署のほうから来ました」とふんわり身元を語る消火器セールスマンのように、「東大の浜田です」と名乗るしかなかったそうだ。たしかに、「東大野球部のOBで、ボランティアでスカウトをしている浜田です」と正確に名乗られても、相手からすれば、どう対応すべきか困ってしまうだろう。仕事をスムーズに進める上で地位や肩書はきわめて重要だが、それなしで高校野球関係者のフトコロに飛び込み続けた浜田の強い心臓には敬服するほかない。

【次ページ】 「ほとんどは高校野球の監督たちとの飲み会です」

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