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《絶体絶命の日本代表》大一番の森保采配は驚きの連続だった…記者が目撃した“チームが一体感を取り戻した”瞬間
posted2021/10/13 17:03
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFLO
こんな試合が見たかったのだ。
10月12日に行なわれたオーストラリアとのアジア最終予選で、日本は2対1の勝利をつかんだ。同日開催の別カードでは、サウジアラビアが中国に競り勝った。オマーンもベトナムを退けている。
4試合を終えて無傷のサウジアラビアが勝点12でグループ首位に立ち、3勝1敗で勝点9のオーストラリアが2位、2勝2敗のオマーンが3位となっている。日本はオマーンと同勝点だが総得点で劣っており、直接対決で負けてもいるため彼らの後塵を拝している。
4試合を終えて4位とは、まったく予想できなかった。率直に言って不甲斐ない結果である。
だが、森保一監督と選手たちは、小糠雨の降りしきる埼玉スタジアムで希望を見出すことができた。
流れは、変わった。
ぶっつけ本番で見えた「裏付けのある起用」
勝てば勝点3差に詰めることができるが、負けると勝点9差に開いてしまう6ポイントマッチで、森保監督はシステムと先発を変えてきた。追いかける展開になっても、疲れの見える選手がいてもこだわってきた4-2-3-1ではなく、4-3-3を選んだのである。中盤の「3」は遠藤航がアンカーに入り、田中碧と守田英正がインサイドハーフに指名された。前線には左から南野拓実、大迫勇也、伊東純也が並ぶ。
サウジ戦のパフォーマンスから判断すれば、柴崎岳、鎌田大地、浅野拓磨が先発から外れるのは論理的である。出場停止の明けた伊東が右サイドに戻り、途中出場のサウジ戦で意欲的な姿勢を見せた守田の起用も納得できる。日本代表では19年12月以来の出場となる田中についても、東京五輪で吉田麻也、冨安健洋、酒井宏樹、遠藤と連携を構築しており、守田とは川崎フロンターレでともにプレーしていた。新天地のデュッセルドルフでも試合に出ている。ぶっつけ本番となるのは間違いないが、裏付けのある起用だった。
スタメン選考も交代も堅実だった森保采配が……
過去3試合の森保監督は、もっと言えば就任からこれまでの指揮官は、スタメンの選考も交代のカードも堅実なものだった。パターン化されていた、と言ってもいい。選手への信頼の表われとも言えるが、相手にとっては分かりやすい。自分たちが高パフォーマンスを発揮できないと手詰まりになり、選手の立ち位置を変えることもパワープレーを仕掛けることもなく、敗戦を告げるホイッスルを聞いてきた。
それだけに、恐ろしくプレッシャーのかかるこの大一番で、システムと選手を入れ替えたのは驚きだった。スタメンだけではない。選手交代も、これまでと違うところがあった。