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「選手が『どこに立つか』で、変わってきます」日本代表のキーマン・MF田中碧(23)がチームに勇気を与える“最大の武器”とは
posted2021/10/14 11:02
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
JMPA
根性ではなくて、システムで。「勇気を持て」と叫ぶのではなく、個人戦術で。日本代表はそうやって恐怖心を克服した。だから、勝てたのだ。
その象徴が田中碧だった。先の東京オリンピックの年代別の日本代表を牽引した23歳のMFが先制ゴールを決め、チームを勝利に導いた。
語っていた「ゴール前に入っていく回数を増やさないと」
田中のゴールシーンには既視感があった。代表戦の直前、所属するデュッセルドルフでの試合だ。今回のオーストラリア代表戦と同じようにインサイドハーフで先発していた田中が、左FWの選手からのクロスに、ペナルティエリア内の右サイドで反応したシーンがあった。
しかし、シュートかクロスかの選択を迷ったような中途半端なプレーで、最終的にはキックミス。相手のゴールキックになってしまった。だから、今回の代表戦に臨む前に田中はこう話していた。
「(Jリーグ王者・川崎フロンターレの心臓としてプレーしていた)今までは、考えたことがなかったとまでは言いませんが、自分が2列目からクロスに入っていくことはそんなに意識していませんでした。でも、(今は)ゴール前に入っていく回数を増やさないといけないです」
そして、オーストラリア戦。再びインサイドハーフに入った田中のもとに、10日前の試合が再現されたかのように、同じ左FWの選手(南野拓実)からクロスが来た。
だが、今度は迷わなかった。
「拓実くんがボールを持ったときに信じて走りましたし。『目の前の相手はクリアしないな』と何故かわからないけど、感じたので。あとはボールを止めることに集中して、決めることに集中して……。上手く入ってくれたなと思います」
田中碧はチームに“魔法”をかけた
このゴールはきっと、長く語り継がれていくのだろう。
だが、このゴールが生まれた要因にこそ意味がある。
「日本の生命線は常に中盤だと僕は思っているので。中盤に素晴らしい選手が多いですし、その選手たちがしっかりと、『自信を持ってプレーすること』で日本は勝てるというか、内容的にも圧倒できる試合が増えてくると思っています」
これはストライカー・大迫勇也の言葉だが、オーストラリア戦でも田中を含めたMF3人がキーマンだった。彼らが、昔ながらの「根性」や「気持ち」ではなく、個人戦術を武器にチームの恐怖心を取り払ったのだ。
田中碧は、チームにどんな魔法をかけたのか。それを理解するためには、過去の試合を振り返らないといけない。