サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
《絶体絶命の日本代表》大一番の森保采配は驚きの連続だった…記者が目撃した“チームが一体感を取り戻した”瞬間
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2021/10/13 17:03
絶体絶命の大一番でオーストラリアに勝ち越した日本代表。手にしたのは、貴重な勝点3とチームの一体感だった
ひとり目の交代は1対0で迎えた61分で、大迫を下げて古橋亨梧を起用している。疲労の色が濃くても最後まで残してきた背番号15を代え、セルティックで好調の26歳をサイドではなく1トップに置いたのは、攻撃のさらなる活性化と古橋の特徴を生かす意味で理に適うものだった。
2枚目は78分だった。70分に直接FKを蹴り込まれ、1対1に追いつかれていたなかで、森保監督は南野を下げて浅野を起用した。交代枠が5つあることを考えると、このタイミングでもうひとり代えることもできただろう。85分には守田から柴崎、長友佑都から中山雄太へスイッチすることになるから、たとえば柴崎を浅野とともに送り込み、3度目の交代では中山とオナイウ阿道をピッチに立たせる、といったベンチワークだ。
ともあれ、森保監督の選手起用は勝利を呼び込んだ。8分の先制点は、スタメンに抜てきした田中が叩き出した。86分の決勝ゴールは、浅野のシュートをきっかけに生まれたものだった。
ゲームの細部に目を凝らせば、課題はもちろんある。前半のうちに追加点を奪うチャンスはあり、決定機をモノにしていればもう少し余裕を持って勝つこともできただろう。
ただ、このオーストラリア戦については、勝点3をつかんだことを評価したい。4-2-3-1で押し通してきた森保監督は、この大一番でプランBを発動した。オプションと呼べるものを手にしたのだ。次に4-3-3でプレーするときには、緻密さを増すことができる。そして、グループ内のライバルにプレッシャーをかけることができる。
さらに言えば、絶対に勝たなければいけない試合に勝利したことで、チームは勝点3奪取にとどまらないものを手にしている。
一体感である。
「自分も戦いたい」ベンチも超臨戦態勢だった
オーストラリアに喫した失点を巡って、アブドゥルラフマン・アルジャッシム主審の判定は二転三転した。このカタール人は、16年9月に行なわれたロシアW杯アジア最終予選で、浅野の明らかなゴールを認めなかった。VARというテクノロジーが採用されてもなお、彼は日本を貶めようとしたのだろうか。