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京都国際「なぜオリックスの応援歌を使用?」その理由に涙、関東一「爆音の“西部警察テーマ曲”」に驚き…現地で聴いた高校野球応援“ベスト5”
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2024/08/21 06:01
ブラバン研究家が選ぶ…今夏の甲子園「応援ベスト5」
2022年のセンバツ、京都国際は新型コロナウイルスの感染対策として大会前に行ったPCR検査で13人の感染が確認され、やむを得ず出場を辞退。その時の混乱を鮮明に覚えていたため、アルプススタンドでこの歌詞を噛み締めるように歌う彼らの姿を見て、「みんなで一生懸命考えて選んだ歌なんだな……」と目頭が熱くなり、応援の力をあらためて強く感じた。
番外編)「愛してるー!」はなぜ流行った?
紹介したベスト5以外にも、今夏のアルプススタンドでは発見が多かった。特に印象的だったのが、千葉・拓大紅陵のオリジナル曲『チャンス紅陵』を演奏する学校が7校もあったこと。8月9日の新潟産大附を皮切りに、金足農業、西日本短大附、南陽工、鳴門渦潮、大社、聖和学園が使用。同曲は拓大紅陵吹奏楽部顧問の吹田正人氏が1986年に作った曲で、千葉県内では広く普及しているが、甲子園でこれだけ演奏されるのは、筆者が知る限り初のこと。各校の野球部に選曲理由を聞くと、「TikTokで見てカッコよかったので、やりたいと思った」という理由がほとんどだったが、聖和学園は「県大会の決勝戦で仙台育英がやっていて、育英さんの想いを背負って僕たちもやりたいと思いました」とのこと。
本家の拓大紅陵が使うコールに、他校によってアレンジが加わり、曲の半ばで「愛してるー!」と叫ぶ部分が数年前からTikTokで拡散。「みんなで『愛してるー!』と叫びたい!」「打席に立つ選手にも『愛してるー!』がはっきり聞こえて奮い立つ」とのことで、一気に広まったのだろう。
作曲者の吹田氏も「ある日の試合をテレビで見ていると、自分の作った曲が聴こえてきて、コンクール会場に遅刻しそうになりました」と笑い、「多くの学校の応援で使われることをうれしく思います」と、この夏の反響に驚きながらも喜んでいた。
拓大紅陵の曲を使う学校が多かった反面、自校のオリジナル曲で応援する学校も。札幌日大高吹奏楽部OBの山本真幸さんが作った『Nichidai Pride』は、曲中に校歌のフレーズを取り入れ、全校生徒にとって耳なじみのある楽曲に。木更津総合の『ターゲット』は、吹奏楽部OGの根本咲良さんが、「野球部からたくさんの力をもらった恩返しに」と作った曲で、これまで野球部が気に入って使っていた他校のオリジナル曲は一切封印。「自分たちらしい応援を」と一新したという。
春夏の甲子園は毎年出場校が違うため、応援の流行やスタイルも毎回異なるが、今夏はオリジナル曲が多く、大変聴きごたえのあるアルプススタンドだった。
夏の甲子園も残り2日。吹奏楽の応援にも耳を傾け、この夏の「音楽の力」を最後まで堪能してほしい。