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ドラフト目玉への“不義理”で大学監督に土下座も…なぜ横浜を辞めたスカウトは巨人・原監督と阪神・星野監督に「一緒にやろう」と歓迎されたか
posted2025/04/08 11:03

2007年の原辰徳監督と星野仙一監督。巨人と阪神で指揮を執っている際の“スカウト引き入れ”秘話とは
text by

長谷川国利Kunitoshi Hasegawa
photograph by
JIJI PRESS

先輩スカウトが「そんなのおかしいやろ!」
あれは5月だったと思いますが、私がちょうど東海大のブルペンで久保のピッチングを見ていた時でした。前述した球団上層部のある方から電話がかかってきたのです。次の言葉に私は耳を疑いました。
「もう久保のところには行かないでくれ」
納得できるはずもなく理由を問うと「自由枠は久保ではなく、法政大の土居龍太郎にすることになったから」と言うではないですか。怒りで携帯電話を持つ手が震えました。土居も東京六大学を代表する素晴らしいピッチャーに違いはありませんが、スカウトとして客観的に見ても実力は久保の方が圧倒的に上なのは明らかでした。
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ちなみに森さんと黒江さんには土居のビデオも見せていましたが、「ちょっと厳しそうだな」という評価をされていました。横浜のスカウト全員も「久保の方」が上という判断をしていて、久保も他球団を断って横浜を意中の球団にしてくれているのです。そんな状況で突然そんな話をされても「はい、分かりました」というわけにいきません。
後日、スカウト全員が横浜スタジアムの選手ロッカールームに集まり、その球団上層部の人間を問い詰めました。先輩スカウトも「そんなのおかしいやろ!」などと色々と言ってくれ、「久保と土居と、あんたはどっちが上だと思っているのか!」と問うと、驚いたことに「久保」だと言うのです。
しかし「久保のことは諦めてほしい」と言うばかり。結局、久保ではなく土居を自由枠で獲得するという結論は変わりませんでした。
後輩の東海大監督に土下座して詫びました
邪推になりますが、この方は法政大から誰か獲らないといけない事情があったのかもしれません。