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森保ジャパン「W杯2大会連続ベスト16」は「1回だけベスト8」より価値あり? 今後は“何とかGS2位突破”を狙うのではなく…
posted2023/01/14 11:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
日本サッカー協会は、日本代表の目標として「2050年までに日本でW杯を開催し、その大会で優勝すること」を掲げている。森保監督との契約延長を発表した記者会見で、反町康治技術委員長は今後の課題として以下の3点を上げた。
1)個のレベルアップ
2)若手の発掘(特にセンターフォワード)
3)能動的なスタイルでプレーすること
3)を実現するためには、1)が欠かせない。欧州でプレーする選手が増えて戦術理解能力が高まり、組織力が増強された今、個の能力を高めること、言い換えれば選手育成システムを整備することが必須となっている。
選手育成システムについて考察する前に、#2では日本が足踏みを続けて“悲願”と化した感があるベスト8入りについて考えてみたい。
ベスト8に4回挑んで一度も達成できなかったのは事実
ラウンド16で敗退する度に、日本の監督、選手は「ベスト8への壁は厚かった」と語る。しかし、他の中堅国にとってもベスト8の壁はそれほどまでに厚かったのだろうか。
#1で説明したように、日本はほぼ世界の中堅国のレベルに達している。にもかかわらず、W杯でまだ一度もベスト8入りしていない。
これまでベスト8の壁に挑んだのは以下の4度だ。
2002年:トルコに0-1で負け(90分)
2010年:パラグアイに延長、PK戦の末に敗退
2018年:ベルギーに2-0とリードしながら連続3失点して逆転負け
2022年:クロアチアに先制しながら1-1に追いつかれ、延長、PK戦の末に敗退
W杯で120分戦って同点なら、PK戦の結果にかかわらず、FIFAは「引き分け」とみなす。従って、4試合の戦績は2分2敗。とはいえ、ベスト8入りに4回挑んで一度も達成できていないのは事実だ。
実は「1度だけベスト8入り」するのはさほど難しくない?
それでは、他の中堅国にとって「ベスト8への壁」はどれほど厚かったのだろうか。1998年以降、初めてベスト8入りした国(その後、一部は強豪国となっている)の成績の変遷は以下の通りだ。
パラグアイ:初出場=1930年、初ベスト16=86年、初ベスト8=2010年
ベルギー:初出場=30年、初ベスト16=82年、初ベスト8=86年
アメリカ:初出場=34年、初ベスト16=94年、初ベスト8=02年
モロッコ:初出場=70年、初ベスト16=86年、初ベスト8=22年
コロンビア:初出場=62年、初ベスト16=90年、初ベスト8=14年
韓国:初出場=54年、初ベスト16、初ベスト8=02年
トルコ:初出場=54年、初ベスト16、初ベスト8=02年
コスタリカ:初出場=90年、初ベスト16=90年、初ベスト8=14年
ロシア:初出場=94年、初ベスト16、初ベスト8=18年
ガーナ:初出場、初ベスト16=06年、初ベスト8=10年
クロアチア:初出場、初ベスト16、初ベスト8=98年
セネガル:初出場、初ベスト16、初ベスト8=02年
ウクライナ:初出場、初ベスト16、初ベスト8=06年
日本:初出場=98年、初ベスト16=02年、初ベスト8=未達
このうち、クロアチアはユーゴスラビア代表、ロシアとウクライナはソ連代表の歴史があるので、日本とは少し事情が異なる。しかし、セネガルやガーナは易々とベスト8入りを達成している。日本のようにベスト8に4度も挑んで跳ね返された中堅国は他にない。
W杯の歴史を振り返ってみると――実は1度ベスト8入りするだけならさほど難しくない。