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鎌田大地42億円、冨安健洋35億円だけどエムバペ252億円、ビニシウス168億円!“市場価格差の根本”を育成システムから考える

posted2023/01/14 11:02

 
鎌田大地42億円、冨安健洋35億円だけどエムバペ252億円、ビニシウス168億円!“市場価格差の根本”を育成システムから考える<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

カタールW杯スペイン戦のスターティングメンバー。鎌田大地や久保建英ら“市場価値10億円オーバー”の選手は増えてきたが……。

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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 日本代表はカタールW杯でアジア史上初となる「2大会連続決勝トーナメント進出」を果たした。その一方でベスト8以上、さらには「2050年大会での初優勝」を達成するためには何が必要なのか。各種データや南米の強国、育成年代指導者の言葉などを参考にしながら考えてみた(全4回のうちの3回目/#1#2#4も)

 ワールドカップ(W杯)カタール大会グループステージ(GS)のドイツ戦とスペイン戦でいずれも同点ゴールを決めて逆転勝ちに大きく貢献したMF堂安律(フライブルク)は、大会後、「自分はまだ力不足。もっと個人能力を上げなくては」と語った。

 日本代表の主力であるMF鎌田大地(フランクフルト)も、「自分を含め、欧州ビッグクラブで主軸を担う選手がどんどん出てこないと……」とコメントしている。

 2002年W杯で日本代表を率いて初のベスト16入りを達成したフィリップ・トルシエは、「この20年で日本はアジアでは指折りの強国となった。しかし、世界の強豪国との差はあまり縮まっていない」として、「日本は選手育成システムを根本的に見直すべきだ」と提唱する。

 日本サッカー協会の反町康治技術委員長も、「個の力を上げること」の重要性を強調している。個の力を高めるには、優れた選手を継続して育成する合理的で効率の良いシステムを整備しなければならない。

選手育成システムが大きく異なる中で

 現在、日本人選手で最も市場価値(以下すべて移籍専門サイト『transfermarkt』より)が高いのはMF鎌田の3000万ユーロ(約42億円/26歳)だ。以下、DF冨安健洋の2500万ユーロ(約35億円/24歳/アーセナル)、堂安の1500万ユーロ(約21億円/24歳)、MF久保建英の1200万ユーロ(約17億円/21歳/レアル・ソシエダ)と続く。

 一方、世界で最も市場価値が高いのはFWキリアン・エムバペの1億8000万ユーロ(約252億円/24歳/フランス代表=PSG)、FWビニシウスの1億2000万ユーロ(約168億円/22歳/ブラジル代表=レアル・マドリー)、FWネイマールの7500万ユーロ(約105億円/30歳/ブラジル代表=PSG)らで、日本のトップ選手の数倍。日本の選手育成システムにおける最高傑作であっても、世界のトップ選手には及ばない。

 持って生まれた身体能力の違いもあるだろうが、日本と欧州、南米の強豪国とでは選手育成システムが著しく異なる。

 欧州や南米では、プロ選手はほぼ100%、プロクラブのアカデミーで育成される。日本のような中学、高校の部活動は存在しない。大学のチームでプレーした選手がプロになることもまずない。

過去W杯7大会、どのような経緯で育成されてきたか

 育成年代の選手たちは中学や高校に通いながら、プロクラブのアカデミーから生み出される。通常、アカデミーにはU-15、U-17、U-20のカテゴリーがあり、U-13以下やU-23のカテゴリーを持つクラブも少なくない。中学、高校、大学といった教育機関のアマチュアチームで育成されてプロになる選手がいるのは日本、韓国、アメリカ、カナダくらいだ。

 1998年以降のW杯に出場した日本代表選手がどのような経緯で育成されたかを調べてみた。

【次ページ】 理不尽な旧来の部活スタイルから“自主性”へ

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