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「この人、何やってんだろう(笑)」三浦璃来も驚いた木原龍一のガッツポーズ…りくりゅう「あなたたち、お葬式みたいね」から“涙の世界一”に返り咲くまで
posted2025/04/08 17:00

フィギュアスケート世界選手権で2年ぶりに優勝したりくりゅうペア
text by

野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Getty Images
フィギュアスケートの王者決定戦となる世界選手権(米国、3月26-30日)。渾身の力でフリーを滑り抜いた三浦璃来&木原龍一組を、ボストンの観衆が大喝采で包み込んだ。木原が苦しそうに両膝に手をつくと、三浦はこの1年をねぎらうように、木原の頭をぽんぽんと叩く。
呼吸を整えた木原は、ようやくガッツポーズ。天井近くまで埋め尽くされた観客席に向かって、何度も両手を上げて拍手をあおった。
「この人、何やってんだろうって思いました。いつもはやらないのに(笑)」
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会場の空気を全身で楽しむ木原を見て、三浦がつられて笑った。
キス&クライに座ると、三浦の左手を木原が両手で包み込み、得点を待つ。『143.22点、フリー2位』の点に続いて、『総合219.79点、1位』が表示されると、2人は飛び上がった。
「今季は、自分たちのやりたい滑りができない時期が続いていました。2年前の世界選手権で優勝した『ただ嬉しい』っていう気持ちより、『全てのことを乗り越えてきたな』っていう今回の嬉しさの方が大きいです」
世界王者に返り咲いた、2人の道のりを振り返る。
冗談を言い、ツッコミあう姿が見られず…
23年世界王者となった2人は昨季、シーズン序盤に木原が腰椎分離症となり、その怪我を乗り越えて世界選手権2位へと駆け上がった。プレ五輪となる今季は、ショートにローリング・ストーンズの『黒くぬれ!』、フリーにスパニッシュテイストの『アディオス』と、強さのある音楽を選曲。満面の笑みで幸せそうに滑る姿がチャームポイントの2人にとって、新たなチャレンジを掲げ、シーズンがスタートした。
スケートアメリカ1位、NHK杯2位で、GPファイナルに進出。しかしGPファイナルでは、廊下を歩くときも、インタビューに答える時も、2人は目を合わさない。いつものように冗談を言い、ツッコミあう姿が見られなかった。
演技後、2位が確定すると木原は『こんなんじゃ話にならない』と吐き捨てるように言う。世界2位のメダルにも嬉しさは微塵もない。隣にいた三浦は、押し黙った。
「私もエレメンツが不安定だったので、迷惑をかけてしまったんだと思いました」
木原の母から「あなたたち、お葬式みたいね」
なぜ、あんなにも息の合っていた2人に距離ができてしまったのか。当時のことを木原は振り返る。
「今思えば、僕が原因だったんです」
そしてこう続ける。