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「なぜ一軍に上げない?」張本勲がビックリ“二軍にいた”落合博満の衝撃…2人の天才を率いた“山内一弘監督”とは何者だったのか? ロッテOBの証言
posted2025/04/05 11:02

プロ入りした1979年から86年までロッテでプレーした落合博満
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph by
KYODO
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張本勲の3000本安打に沸いていた1980年、同じロッテの二軍で打ちまくっていたのが落合博満である。5月31日から6月7日まで5試合連続ホーマーを放ち、その頃の打率は4割を超えた。だが、一軍帯同は、7月の後期開幕まで待たされた。この昇格には「フロント・高見沢喜人の推薦」「西垣徳雄代表の命令」と複数の説がある。張本の述懐はこうなる。
張本と落合の関係
落合の才能に惚れ込む高畠打撃コーチが、4歳年上の張本に「良い打者がいるので見てもらえないでしょうか」と懇願。卓越した技術に目を見張った張本が「なぜ、一軍に上げないんですか」と聞くと、山内監督は「もっと腕をたたまないと、インハイは打てないから」と答えた。すると張本はすかさず反論した。
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〈監督、あなたの現役時代だって、あのONだって、いや私自身もそうでしたが、インハイを衝いてくる厳しい球をそんなに完全に打てましたか。(中略)そんなパーフェクトな打者なんて、そんなにいませんよ〉(※1)
張本の進言に、山内監督は「それもそやなあ」と頷いたという。基本的に先入観で判断しない指揮官も、落合が天才ゆえに厳しい見方をしていたのか。複数の意見が重なって昇格した26歳は7月12日の近鉄戦、新井昌則の代打で登場。鈴木啓示の初球の内角スライダーをレフトスタンドに叩き込むと、翌日からスタメンに抜擢され、6試合で5本塁打と爆発する。山内も喜びを隠せなかった。
〈ありゃあすごい。バットの遠心力でボールをよく飛ばしている。レオンのパワーと変わりないよ〉(※2)
落合は3年目に首位打者を争っている頃、〈自分のスイングについて考えた私は、実は山内さんの指導が生きていることに気づかされた〉(※3)と語っている。山内退任から2年後、打率3割を達成した水上善雄も同じ思いを抱いている。