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佐々木朗希への詰め寄りが物議を醸したが…元審判が語る“乱闘と判定”の舞台ウラ「ただで帰れると…」「審判が熱くなっちゃ駄目でしょう」
text by
佐々木昌信Masanobu Sasaki
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/05/05 17:03
佐々木朗希に対する球審の詰め寄りが物議を醸したが、元審判は過去にどんな経験をしたのだろうか
当時は野次もすごかったですよ。ダグアウトから、あからさまに「当てろ!」「わかってんだろうな」「お前、ただで帰れると思うなよ」。そういう会話が試合中に平気でいっぱい飛びかっていました。
そういう野次を聞いた場合には試合を止めて「警告試合」にすることが95年以降は徹底されました。
デッドボールから乱闘事件に発展するのが極端に減ったのが、中畑清・代理監督で日本が銅メダルを獲った2004年のアテネ五輪以降です。なぜかというと、初めて日本代表全員がプロ選手で結成されたからです。それまであまり他チームとの交流がなかったのが、自主トレーニングなどでも交流するようになって、デッドボールが減ったというわけです。
選球眼にすぐれる吉田正尚、近藤健介
日本ハムの近藤健介選手はフォアボールが多く、2019年・20年と最高出塁率のタイトルを獲得。オリックスの吉田正尚選手は2020年、72四球を選びながらリーグ最少の29三振で首位打者獲得。両選手の「選球眼の確かさ」は数字が証明しています。
この2人はここ1、2年、ホームラン数がすごく多いほうでもない。ワンバウンドになるフォークボール、胸元高めのストレート、外角のゆるい変化球。いわゆる「釣り球」には手を出さない。釣り球、すなわちボール球を見極めるからフォアボールが増えていきます。
巨人の岡本和真選手やヤクルトの村上宗隆選手には「ホームランを打たれるくらいなら、クサいところを突いて一塁に歩かせてもいい」という意味でのフォアボール。同じフォアボールでも、少し意味が違うのです。
一方で球審からすると、こういう見方があります。球審が迷うようなアウトコースの際どい球を「ストライク」と判定したとき、「えっ、入っているんですか!?」という反応をしたバッターは「アウトコースの見極めができていて選球眼がいい」わけです。
その意味では、いま中日に在籍する福留孝介選手は、見極めがしっかりできていました。特にアウトコースのスライダー。ソフトバンクの今宮健太選手も同様です。
最近の選手はものすごくマナーがいいので、球審に文句を言う選手は、ほぼいません。文句を言う典型的な人たちの共通点はインコースが弱い選手です。インコースの際どいところを攻められてストライクを取られるとお手上げだということでしょう。
審判団と選手会は、野球界発展のために会合を持ちます。