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佐々木朗希への詰め寄りが物議を醸したが…元審判が語る“乱闘と判定”の舞台ウラ「ただで帰れると…」「審判が熱くなっちゃ駄目でしょう」
text by
佐々木昌信Masanobu Sasaki
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/05/05 17:03
佐々木朗希に対する球審の詰め寄りが物議を醸したが、元審判は過去にどんな経験をしたのだろうか
ストライクゾーンを高めに少し広げたシーズンがあったのですが、ある選手代表はこう提案してくれました。「ストライクゾーンを広げるにしても、高めは体が覚えています。バットを持っていて手が届くんですから、高めより特にアウトコースはもう少し広げていいですよ。それのほうが試合時間短縮にもつながるし、好影響ではないでしょうか」
日本のピッチャーのコントロールの技術は優秀なので、本来のストライクゾーンをAIで判定し始めると、もう完封、完封の連続だと推察されます。バッターは太刀打ちできない。野球というスポーツでなくなってしまうと思います。
ゴメス選手と張り合った私
2000年、中日のレオ・ゴメス選手がヤクルトの石井一久投手のインコース、キレ味鋭いストレートを見逃し三振。完全なストライクなのに、「なぜ手を出さないの?」という投球でした。
それをゴメス選手が食って掛かってきたのです。
「何言ってんだ、お前。文句があるなら日本語で言え!」
思わず私はゴメス選手と張り合っていました(帯の写真参照)。
立浪和義選手(現・中日監督)と井上一樹選手(現・阪神コーチ)が、慌てて2人の中に割って入りました。
「落ち着いてください、佐々木さん。審判が熱くなっちゃ駄目でしょう」「さすがに、あんなストライクを文句言われたのは初めてだ!」
ゴメス選手を退場にはしませんでしたが、最後に守備につくときに私のところに近寄って来たんです。「なんだ、また文句言いに来たのか?」
通訳も一緒について来ました。
「ゴメスが謝りたいそうです」「サッキ、ゴメンナサイ」
ダグアウト裏でビデオを見て、ストライクなのを確認したんでしょうね(苦笑)。
その3~4日後、ゴメス選手と私が口角泡を飛ばして言い合っているパネルが自宅に届いたのです。中日のマネージャーから電話がかかってきました。
「パネル届きましたか? すごくいいシーンが新聞に載ったんで、新聞社が送ってくれたそうです」
星野監督も言っていました。
「ササヤンがあんだけ怒ってたから、ゴメスが間違っているのはすぐわかった。だからオレ、抗議行けなかったわ。本気で怒ったら強いぞ。怒るときは人間本気で怒んなきゃいかんのや」
<第1回、第2回からつづく>