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「落合監督はちゃんと見てくれて…」元審判が感謝する“吉見一起の微妙なストライク判定”「おめえのせいじゃねえから、気にしないでやれ」
posted2022/05/05 17:01
text by
佐々木昌信Masanobu Sasaki
photograph by
Tamon Matsuzono
2020年までプロ野球の審判員を務めた佐々木昌信さんの『プロ野球 元審判は知っている』(ワニブックス)から一部を転載し、裏側をご紹介する(全3回/#2、#3も)
ダルビッシュのフォークは「鉛の球」
セ・リーグとパ・リーグの審判部が統合されたのが2011年。それ以前から「球審として直接投球を見てみたい」と気になる存在がダルビッシュ有投手でした。
プロ入り2年目の06年から6年連続2ケタ勝利、07年から5年連続防御率1点台。何より毎年10個近くの「貯金」をつくる圧倒的なピッチングを展開していました。私は07年日本シリーズの日本ハム—中日戦に審判として出場し、ダルビッシュ投手のすごさを知っていました。
ダルビッシュ投手は日本最後の10年・11年しか球審として見ていませんが、その2シーズンは連続して「最多奪三振」のタイトル獲得。10年は「最優秀防御率」だし、11年は18勝。最高潮の2年でした。
「変化球はアートだ」と自ら口にするくらい多彩で、11種類あるともいわれる変化球すべてが力強かった印象。空振りを取るためのフォークもキレというより球威がある。まるで鉛の球を使って投げているようなイメージ。当然、打っても打球がドン詰まりしそうなフォークを投げていた唯一のピッチャーです。
“ダルビッシュ以上”だと思った金子千尋
ダルビッシュ投手同様、金子投手もいったい何種類あるのかなというくらい変化球が多かったんです。私はよくキャッチャーに聞いていました。
「いまのはフォーク?」
「ツーシームです」
「今度はカットボール?」
「ナチュラルストレートです。ストレートのサインを出しても、ちょっと力を入れて、カットボールっぽく投げるんです。だからバッター、これ絶対打てないと思いますよ」
しかもストレートは、あれだけ細い体(180センチ77キロ)で、阪神・藤川球児投手の「火の玉ストレート」レベルです。ドーンって来るボールを投げる。
ダルビッシュ投手は5~6年連続で圧倒的な成績を残しました。一方の金子投手は、ファンのかたにはときどき離脱するイメージがあるかもしれません。しかし、私個人の意見では、当時はダルビッシュ投手より金子投手のほうが数段上だと思っていました。