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「正直言って2日間でここまで機能するものかと…」中村憲剛が驚いた“日本代表が選んだ強気すぎる守備”とは?

posted2021/10/15 17:02

 
「正直言って2日間でここまで機能するものかと…」中村憲剛が驚いた“日本代表が選んだ強気すぎる守備”とは?<Number Web> photograph by JMPA/Kiichi Matsumoto

あとがない状態で迎えたW杯アジア最終予選、オーストリア戦。日本代表は2-1で勝利した

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中村憲剛+戸塚啓

中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka

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JMPA/Kiichi Matsumoto

 日本代表が復権へ踏み出した。

 1勝2敗とあとがない状況で迎えた10月12日のオーストラリア戦で、2対1の勝利をつかんだのだ。

 絶対に負けられないこのホームゲームで、森保一監督はいつもの4-2-3-1ではなく、4-3-3にシステムを変更した。先発も入れ替えた。

 システムとスタメンを変えたことで、ピッチ上にはどのような現象が起こったのか。川崎フロンターレの一員として4-3-3のシステムでプレーした中村憲剛氏に、MFの視点から解説をしてもらった。オーストラリア戦に先発した守田英正と田中碧は、川崎Fで中村氏の薫陶を受けた選手でもある。最終予選を知る元日本代表としての視点も交えて、日本代表の勝利の真相に迫ってもらった(全2回の1回目/#2に続く)。

◆◆◆

 本当に大きな、大きな1勝でした。

 選手たちは逆境に打ち克ちました。ここでやらなければいつやるんだという状況のなかで、本当に観ている人たちが胸が熱くなる試合を、魂が震える試合をしてくれました。

すべての人たちの想いを乗せたゴール

 僕はDAZNの解説でスタジアムにいたのですが、ホームゲームの力を感じました。入場者数に上限があり、声を出しての応援ができない状態でも、好プレーに拍手が沸き、日本がゴールに迫ると観客が前のめりになり、ゴールを期待する空気が大きく膨らんでいきました。ピッチ上の選手たちがその空気を感じるからこそ、プレーに躍動感が出てくるのです。

 得点が決まった瞬間のスタジアムの雰囲気は、もうたまらなかったですね。無観客はどうしても無機質なものになってしまいますが、有観客はサポーターのみなさんの想いがスタジアムに充満する。自分自身の経験として言えることですが、みなさんの想いはピッチに届くのです。

 みなさんの後押しがなければ、あの2点目は生まれなかったと思います。浅野が打ったシュートは相手GKとDFに触りましたが、みなさんの「いけっ! 入れ!」という思いや願いによって導かれるようにポストに当たり、オウンゴールになったのです。日本サッカーに関わるすべての人たちの想いを乗せたゴール、と言えるでしょう。

 もちろん、無観客試合でも同じゴールが生まれたかもしれません。それでもあのゴールに関して言えば、有観客試合だからこそ決まったのではと、スタジアムにいたひとりとして思います。

ローカルームへ戻る選手が「よっしゃあ!」

 試合後には田中碧選手のインタビューを担当しました。インタビューを待っている間、ロッカールームへ戻る選手たちの様子を見たのですが、「よっしゃあ!」という一体感のある歓喜が広がっていました。その姿を見て、僕は2010年の南アフリカW杯の初戦で、カメルーンに勝った直後の記憶が蘇りました。

 当時の日本代表は直前のテストマッチで4連敗して、選手だけでミーティングをして、「やるしかない」という空気を作ってカメルーン戦に臨み、本田圭佑のゴールで勝った。それまでの停滞感を吹き飛ばし、グループリーグを突破したあの空気感と同じものを、オーストラリア戦の試合後に感じたのです(サウジ敗戦で中村憲剛が思い出す“南アW杯の直前ミーティング”「闘莉王が『地面に這いつくばってでもやるしかないだろ!』」)。

【次ページ】 「4-3-3」で何が変わったのか?

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