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「正直言って2日間でここまで機能するものかと…」中村憲剛が驚いた“日本代表が選んだ強気すぎる守備”とは?
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byJMPA/Kiichi Matsumoto
posted2021/10/15 17:02
あとがない状態で迎えたW杯アジア最終予選、オーストリア戦。日本代表は2-1で勝利した
南野はリバプールでプレーしているので、イメージがしやすかったのでしょう。実際に彼のアプローチの迫力は素晴らしかった。
伊東は守備時の立ち位置と狙いを理解してもらったうえで、普段見せているスピードを生かした牽制とインターセプトのセンスを考えれば、対応は可能だったと思います。両ウイングの守備のセンスとプレー強度が、非常にうまくハマりました。
強気の戦略がハマった“2つの理由”
そこにオーストラリアのスタイルが合致したことも大きかったと思います。
オーストラリアは後ろから丁寧につないでくるチームです。ふたりのCBとダブルボランチが中央で角度と幅を取りながらビルドアップをスタートさせ、その間に両SBに高い位置を取らせ、両サイドハーフを内側に寄せて2トップと4人で集団を作る。それが基本的なビルドアップの形ですが、日本が用意した守備の形にものの見事にハマりました。オーストラリアは明らかに日本の3トップとふたりのIHのプレス、そこから溢れてきたら現れるワイパー遠藤の三段構えのプレスを非常に嫌がっていました。
守備に関して言えば、気候にも触れるべきでしょう。高温多湿のサウジアラビアとは違って、この日はとても涼しかった。前線から守備をして点を取る姿勢を見せるには、うってつけの気象コンディションでした。
1勝2敗と追い詰められたこのタイミングで森保監督がシステムと選手を変更したことに、驚きの声がありました。準備期間の短さからシステム変更は考えにくく、選手を入れ替えるなら右のサイドとボランチかなと予想していましたが、森保監督は「絶対に勝たなければいけない、そのためなら動く」と、覚悟を固めたのではないでしょうか。システム変更については、徹底した分析に基づいたものでもあったと思います。
川崎F仕込みの“「4-3-3」で「4-4-2」を崩す”
攻撃については、4-3-3のシステムで4-4-2の守備ブロックを崩すのは、昨シーズンから今年にかけて川崎Fが何度も経験してきているシチュエーションです。この時期に川崎Fに在籍していた守田と田中にとっては専売特許と言っていいものです。
4-3-3はその構造上、ふたりのIHは相手2トップの脇か中盤の4枚の間に自然に立つことができます。まずそこで相手を困らせ、相手の守備組織を見たうえで、守田か田中がサイドヘ開くか、味方のCBとSBの間に立つことで、ローリングと呼ばれる動き── 左SBの長友が高い位置で幅を取り、ウイングの南野が外から中に入って、IH含めた3人で新たな三角形をうまく作り、相手のマークを困らせるようなポジショニングを取ることができていました。
右サイドは基本的に伊東が幅を取り、酒井はインサイドサポートですが、そこもうまくレーンに被らないように調整を加えながら、人とボールを動かせていました。