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野球界に増殖中の“ネット系コーチ”に振り回される選手たち…巨人・久保康生コーチが語るデータ活用の利と害「今日伝えたことが、翌日には違っている」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2023/07/04 17:02

野球界に増殖中の“ネット系コーチ”に振り回される選手たち…巨人・久保康生コーチが語るデータ活用の利と害「今日伝えたことが、翌日には違っている」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

原辰徳監督(左)を支える65歳の久保康生・巡回コーチ

 直江は2年目の20年8月に一軍デビューを果たし、この時、巨人・堀内恒夫元監督が「外角低めにあれだけ強い真っ直ぐを投げられる若手投手を久しぶりに見た」と絶賛。原辰徳監督も「来年の新人王を獲らせる」と期待を寄せた有望株だ。しかし同年に椎間板ヘルニアを発症して手術を受け、リハビリを経て22年に本格復帰したが、そのときにはあの糸を引くような外角低めへのストレートは影を潜めてしまっていた。

「今年のキャンプから彼とは10日間くらいずっと一緒にやって、すごくはまったんですよ。で、(一軍に)送り出して一人歩きしてきたわけですけど、そこで少しずつ少しずつズレてきてしまった。もちろんゲームの重圧もそうですし、自分の気持ちの重圧もありフォームがだんだん失われていったというのが現状ですね」

不思議な「腕クルクル」の真意

 ファームでの練習では腕をクルクルと回す予備動作をして、そこからボールを投げるという練習を取り入れている。

「あれは手が急がないと体が前に行くのに間に合いませんよということ。体を前に行かせているのに、手はそのまま置いていたら故障の危険もあって危ないから、練習で右手を回しながらいつでも投げられる準備をさせています。足が来て、手の準備はこういう順番で行われていますよっていうことを、クルクル回させて覚えさせているということです」

 選手や報道陣の間ではこのクルクル回す動作が話題になっていたが、そこには久保コーチの独特な理論と方法論があるわけだ。そういう技術的に解析できる眼力と指導の理論、そしてそれを伝える言葉と方法が指導者には問われる。

「僕はメンタルコーチであり技術者」

「ピッチングコーチは技術屋じゃないと長持ちしないよと、僕は若いコーチたちには伝えています。もう本当に町工場のすごい技術屋さんじゃないと、この仕事はなかなか持たない。すぐ淘汰されて、次の人がすぐ来るっていう世界なんですよね。僕はメンタルコーチであり、技術者であり、まあ良き兄貴であり、親父であり、じいさんであると。それを一人、何役かでやっていますよね。これは年の功でもあるかなと。言いづらいことでも、この年齢であればあの子たちにも伝えられる。優しい顔していけるっていうね(笑)。どこかで彼らが成長できる入り口を見つけなきゃいけない。泳がせながら、失敗させながらね」

 数字を追い求めるのがプロの世界であるが、決してその過程は数字だけではない。心技体を一致させて、悩む選手が一本立ちするのを劇的に手助けする。

 それが“魔改造”の正体なのである。

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