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巨人の5年目左腕・横川凱はなぜ覚醒した? エース・菅野智之の復活も支えた65歳の名コーチと“魔改造”の正体「この子はどの道を進みたいのかなって」

posted2023/07/04 17:01

 
巨人の5年目左腕・横川凱はなぜ覚醒した? エース・菅野智之の復活も支えた65歳の名コーチと“魔改造”の正体「この子はどの道を進みたいのかなって」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季頼もしい投球を続ける横川

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Hideki Sugiyama

 “魔改造”という言葉をご存じだろうか。元々はフィギュア愛好者の間で流行り出した言葉で、フィギュアの衣服などを剥ぎ取り、原形とはかけ離れた自分好みの禁断の姿に変えることを称した闇の言葉である。その闇の言葉が、いま球界で盛んに呟かれている。ある意味“禁断”ではあるかもしれないが、なかなか覚醒できなかった選手のフォームを大胆に変え、新たなステージに進ませる。それが球界における“魔改造”の定義だ。その“魔改造”のスペシャリストとして注目を浴びているのが、巨人の久保康生巡回投手コーチである。久保コーチによる“魔改造”の正体とは一体どんなものなのか? その秘密を2回にわたってお届けする。〈全2回の#1/#2へ〉

 巨人で久保コーチの“魔改造”に注目が集まったのは、5年目の左腕・横川凱投手の覚醒だった。

 横川は大阪桐蔭高から2018年のドラフト4位で入団。2年目の20年にいきなり一軍に抜擢されたが、その後は低迷が続き、育成契約にもなった。ある意味、伸び悩みの典型のような投手だったが、今季はキャンプから190cmの長身を生かしたダイナミックなフォームに激変。3月9日に支配下選手に復帰すると、オープン戦でも結果を残して開幕ローテーション入りを果たした。そして3度目の先発となった4月23日のヤクルト戦で5回を5安打2失点に抑えてプロ初勝利をマークすると、その後も苦しい先発投手陣の中で、交流戦までローテーションを守って3勝。交流戦明けの広島戦では“スーパーリリーフ”としてマウンドに上がり4勝目をマークするなど、首脳陣の信頼を得ている。

 この覚醒を演出したのが、久保コーチの“魔改造”だったという訳だ。

 横川の何を、どう改造したのか? 今回の取材では、まずそこが久保コーチへの最初の質問だった。

「最初にパッと見たときはサイドスローからスリークォーターか……ちょっとその上ぐらいかなっていう感じの腕の振りでした。彼は背が高い投手なのに(フォームが)小さい。この子はどの道を進みたいのかなっていうところからでしたね」

グラブをはめた右腕に注目すると…

 何で長身を生かさずに、横から投げてしまうのか? 普通なら横から出ている左手の動きに視線がいき、もっと上から投げ下ろせということになるのだが、久保コーチが注目したのはグラブをはめている右腕の動きだった。

「(テークバックで)右手を早く下ろしてしまうから、グラブと地面との幅が狭くなって、そこから右手の行き先を探すと、横回転して背中側に回していくしかないんですね。右手を後ろに引いてしまえば、左手はそれにつられて横から出なきゃいけない。これが彼のピッチングの原理だったんです」

【次ページ】 ボールの勢いも一変

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