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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
野球界に増殖中の“ネット系コーチ”に振り回される選手たち…巨人・久保康生コーチが語るデータ活用の利と害「今日伝えたことが、翌日には違っている」
posted2023/07/04 17:02
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
SANKEI SHIMBUN
巨人・久保康生巡回投手コーチの“魔改造”に迫る第2回は、データが氾濫する中で、どう若い投手を育てていくべきなのか? 久保コーチの視点と巨人の若手投手の“魔改造”の進捗状況を聞いた。〈全2回の#2/#1へ〉
日本中を熱狂に巻き込んだワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の優勝。その舞台裏を宮崎キャンプから取材していて印象に残ったことの1つが、ダルビッシュ有投手や大谷翔平投手が1球ごとにデータを精査しながら投球練習を行う姿だった。
2人の姿に感化されたように代表メンバーの投手たちも、ボールの回転数や回転軸の傾き角度などの数値チェックを投球練習の中でさらに重視するようになった。大会後に何人かの投手からは「データの活用の仕方が勉強になった」という証言も聞いた。
トラックマンなどの計測器具が12球団に行き渡り、いつでも目の前で自分の投げるボールを丸裸にできる。それはピッチングを進化させていく上で大きな武器になるのは確かだ。一方でそうしたデータを元に、インターネット上では理想のボール、理想の投球内容や理想の投手の姿をアドバイスする“コーチ”が出現して、その指導にハマる選手も多い。
もちろんそうしたネット系の“コーチ”の指導でピッチングが向上した選手もいる。ダルビッシュや大谷、また日本代表クラスで技術的にも完成された投手が、より高みを目指しデータを元に理想を追い求めることはある意味、当然なのかもしれない。しかしまだ投球フォームが出来上がっていない若い選手が、データばかりを追い求めることには「弊害も多い」と指摘する現場の声があるのも現実だ。