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元日本代表・中村憲剛に聞く“直接FK献上シーンは何が起こっていたの?”「判断がとても難しい局面だった」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/10/15 17:03
大一番のオーストラリア戦で見事勝利を掴んだ日本代表。元日本代表・中村憲剛氏が徹底解説する
それでも、4-3-3で勝ったメリットは大きいでしょう。理由はふたつあります。ひとつは日本にオプションが増えたこと。もうひとつはオプションが増えたことで、対戦相手と駆け引きができるようになったことです。
4-2-3-1でスタメンもほぼ固定されていたこれまでは、相手からすると分析しやすいチームでした。それがこれからは、「どちらのシステムでくるのか」と、相手に考えさせることができます。オーストラリアもメンバー表を見て、「えっ?」と思ったでしょう。その効果は、前半の彼らのパフォーマンスを見ればよく分かりました。
どの相手に対しても試合前から駆け引きができるようになり、相手を精神的に揺さぶれます。試合当日だけではなく、準備にも影響が出るでしょう。日本戦は4-2-3-1に備えたトレーニングをすればよかったものが、4-3-3への備えもしなければならなくなる。当たり前ですが、トレーニングセッションは増えます。準備期間が限られる最終予選において、この効果はことのほか大きいのではないかと思います。
日本代表はこの勝利で「真のスタート」を切った
そして、このグループで無敗のオーストラリアに土をつけたことで、「やはり日本は力があるのだ」との認識が広がっていくことも大きいでしょう。それもまた、今後の戦いに好影響をもたらすはずです。この日の結果と内容を見て、他の国もオーストラリアに対して勇気を持った戦いかたができる可能性が出てきます。
オマーン戦でつまずき、中国に辛くも勝利し、サウジアラビアに負け、オーストラリアに競り勝った。しびれるような空気のなかでの4試合で、選手たちは「最終予選の経験値」を上げたと思います。
オーストラリア撃破の高揚感や一体感を、選手は忘れないでしょう。どういう空気で練習をしたらこうなるのか、どういうテンションで臨めばこういう試合ができるのか、彼らは身をもって理解したでしょう。失ったものはあるけれど得るものもあり、失った勝点を挽回できるところまで戻ってきました。色々な意味で真のスタートを切ったとも言えます。
浮上のきっかけはつかみました。次のアウェイ2連戦で確実に勝点6を取ることで、さらに上昇気流に乗ってほしい。11月シリーズまでの約1カ月の間にそれぞれの場所でさらに成長し、次に集まったときに良い雰囲気のなかでチームとしての競争力を高め、試合に臨んでほしいと思います。
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