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甲子園の風BACK NUMBER
「野村克也監督から提案を」“阪神→楽天→巨人”元プロの智弁和歌山監督が教え子に“1200グラム木製バット”を勧めた背景「指導者の役目だと」
posted2025/04/02 11:02

今センバツで木製の特注バットを使用した智弁和歌山の黒川梨大郎。背番号を含めて、元プロの中谷仁監督のチーム作りの背景が見えてくる
text by

間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
選手の特徴を見極めて生かすのは指導者の役目
2025年春のセンバツで準優勝を果たした智弁和歌山。部員数は決して多くなく、中学時代は全国大会に縁のなかった部員も少なくない。中谷監督はチームの理想像を定めていない。在籍する選手それぞれの特徴を最大限に引き出すことこそが、目指すチームの形となる。新2年生と新3年生の2学年で戦う昨秋から今春のセンバツにかけては、特に苦労が大きかったという。
「部員数が少ないので、誰がどこにはまるか試行錯誤してきました。けが人もいましたから」
苦悩の跡は選手の背番号にも表れている。今春のセンバツでバッテリーを除いて守備番号と背番号が一致していたのは、ファースト、センター、ライトの3つだけ。サードの奥雄大選手は17番、セカンドの大谷魁亜選手は6番でショートの黒川梨太郎選手が4番を付けた。中谷監督が冗談交じりに明かす。
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「もう少しメンバー登録の提出期限を遅くしてくれたら、背番号と守備位置を合わせられると思います。メンバー登録の時点ではセカンドとショートが逆でしたが、練習していく中で今の形の方が良いと判断して入れ替えました」
センバツ出場校は、大会が始まる1カ月以上前に背番号を含めた選手登録を済ませる必要がある。その時点で指揮官がベストと考えた布陣は1カ月の間に変化する。それだけ、中谷監督はあらゆる可能性を模索しているのだ。
「選手の特徴を見極めて生かすのは私たち指導者の役目です。今は打球角度やヘッドスピードなど数字が出る時代なので、自分の経験や感覚だけではなく、論理的に考えながら選手を指導する必要もあると思っています」
「ご縁」とチーム力、そして打撃力
中谷監督は阪神、楽天、巨人と3球団でプレーしたプロの知識や経験を持つ。その強みを生かしながらも、固執や押し付けはしない。客観的な数字を見ながら、選手に提案する。
選手と指導者をつなぐ「ご縁」。一期一会を大切にする姿勢はセンバツで準優勝を果たしたチーム力と決して無縁ではない。
それは打撃面に目を移しても見えてくる。