サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
元日本代表・中村憲剛に聞く“直接FK献上シーンは何が起こっていたの?”「判断がとても難しい局面だった」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/10/15 17:03
大一番のオーストラリア戦で見事勝利を掴んだ日本代表。元日本代表・中村憲剛氏が徹底解説する
守田と田中は判断が難しかったと思います。プレスにいこうとする出鼻をくじかれてロングボールを蹴られたら、そのセカンドボールを拾うために戻らなければならなくなります。前に出たあとで、後ろに戻らなければいけない。しかも連続でそれを行うのは、かなり大変な作業です。
他方、プレスへいかずにフリーで前を向かせれば、オーストラリアにボールを握られることになります。それをチームとして良しとしないなら、守田と田中は出ていかないといけない。
そうなると自分たちの背中が、遠藤の脇が空きます。前半はウイングと協力をして、そのスペースをぼかしながらうまく守れていたのですが、相手がロングボールを入れてこぼれ球を拾ってくる攻めに変えてきたときに、守田か田中が出ていって蹴らせないようにするのか、それとも蹴らせたなかで対応するのか。守備の選択肢が増えたため、対応が難しくなっていきました。後半はその攻防の連続になり、失点につながる直接FKを与えたシーンは、蹴らせないで奪うという判断でプレスへいったことがきっかけとなりました。
「直接FKを献上」ピッチでは何が起こっていたのか?
日本からみて敵陣の右サイドから左サイドへボールを動かすビルドアップに対して、守田が大迫と南野に連動して出ていきました。守田が対応したことで相手ボランチへのタテパスは防ぎましたが、左サイドに展開されます。パスを受けた右SBに対しては、長友が少し長い距離をスライドして出ていきました。守田がプレスをかけた時点で最終ラインが連動して押し上げられなかったので、長友が出ていく距離が長くなったのです。
長友の裏へ走った選手には、左CBの冨安健洋がスライドしようとしました。しかし、右CBの吉田麻也のスライドが間に合っていなかったため、スライドをやめて中央を守ることにシフトしました。ゴール前を手薄にしない意味では、冨安の判断は間違っていなかったと思います。
問題は前段階の部分です。守田にプレスへいかせるのなら、後ろがコンパクトであるという前提を作るべきだと思います。後ろがカバーできる距離感にしておかないと、このシーンのようにそれぞれがスライドをする距離が長くなり、間に合わなくなることで最終的に走られた選手を捨てなければならなくなります。プレスにいかせるならコンパクトにしたうえで、いかせないなら声をかける。
後半は押し込まれる時間帯もありましたし、判断がとても難しい局面だったかもしれませんが、そのワンプレーでスコアが動いたのは事実です。4-3-3の泣きどころを突かれた意味では、このシステムで同じ現象が起きそうな時にどう対処するかを、チーム全体でしっかり共有しておくべきでしょう。
古橋をCFに…「より特徴を発揮しやすい」起用は初めて
選手交代にも触れたいと思います。