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育成ドラフト6位→ホークス、五輪とWBCで栄冠→巨人FAの甲斐拓也「じつは狙える史上初捕手の偉業」とは…打撃もOPS1.384、キャベッジと大暴れ
posted2025/04/01 17:00

巨人に移籍した甲斐拓也。育成ドラフト6位から球界屈指の捕手へと駆け上がった
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
ゴールデン・グラブ賞7回、ベストナイン3回。今のNPBを代表する捕手、甲斐拓也のFA移籍は、全く予想外だった。甲斐は、MLB球団に倣ってファームを拡充し、選手層を厚くするという福岡ソフトバンクホークスの補強方針の賜物と言っても良い選手だったからだ。
育成ドラフト6位から正捕手→五輪、WBCでも活躍
ソフトバンクが三軍制を導入したのは2010年オフだが、甲斐はこの年の育成ドラフト6位でソフトバンクに入団。育成5位は牧原大成、4位は千賀滉大だった。入団1年目の甲斐は二軍戦にも出場せず、主として大学、社会人、独立リーグとの試合でマスクを被った。
当時、筆者は四国アイランドリーグPlusの試合をよく観戦していて、四国独立リーグとソフトバンクとの交流戦で甲斐はマスクを被っていた。小柄だが恐ろしく俊敏な捕手だという印象だったが、まさか日本を代表する捕手に成長するとは全く思わなかった。
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入団5年目の2014年に一軍に初出場すると「甲斐キャノン」と呼ばれた鉄砲肩と守備力で、同期ドラフト1位の山下斐紹などのライバルを蹴散らすと、2017年に正捕手となりこの年初のベストナイン、ゴールデングラブを獲得。以後、不動の正捕手としてパの最強チーム、ソフトバンクの要を守ってきた。
甲斐が正捕手になった2017年から昨年までの8年で、リーグ優勝3回、日本一4回、ポストシーズン進出7回。2019年プレミア12、21年東京オリンピック、23年WBCでもマスクを被り、名実ともに「日本一の捕手」と言ってよかった。2019年にはホークスの大先輩、野村克也の背番号「19」を受け継いだ。
岸田、大城、小林がいるが…ポイントは阿部監督
その甲斐拓也が、リーグも違う巨人に移籍するとは全く予想外だった。
大物捕手のFA移籍というと、2002年の横浜、谷繁元信の中日へのFA移籍があるが、このときは中日の正捕手の中村武志が移籍を訴え横浜に移籍。中日は、結果的にポジションを空けて谷繁を迎え入れた。
しかし今回移籍した巨人は岸田行倫、大城卓三、小林誠司と正捕手クラスの選手が3人もいる。甲斐が移籍すれば彼らの出場試合数は確実に減ると考えられた。