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森保ジャパンを“攻略”したメキシコ五輪代表コーチ(分析担当)が明かす日本の強みと弱み「平均を出したら、日本のほうが上ですが…」
posted2021/10/06 11:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Getty Images
――東京オリンピックでの銅メダル獲得、おめでとうございました。西村さんはメキシコ代表チームのコーチとして分析も担当されていましたが、日本代表のゲームは何試合くらい分析されたのでしょうか?
西村 まずは今年3月のアルゼンチン戦から見始めて、(7月の)ホンジュラス戦、スペイン戦、(グループステージ初戦の)南アフリカ戦の4試合をベースにしました。3位決定戦の前は、僕らとの試合、(準々決勝の)ニュージーランド戦、スペインとの準決勝の3試合を確認しました。例えば、ホンジュラス戦は日本がボールを握る時間が長かったので、攻撃の部分をチェックして、スペイン戦では守る時間が長かったので守備の部分を。ニュージーランド戦では相手が中盤をダイヤモンドに変えたときにすごく苦戦していたので、要所要所を見ていきました。
――2019年には、6月のトゥーロン国際大会と9月のメキシコ国内での親善試合で二度対戦しています。当時とアルゼンチン戦以降の日本はメンバーもシステムもかなり変わりました。どう感じていらっしゃいましたか?
西村 率直な感想として、3-4-2-1のほうが嫌だなと。「なんで4-2-3-1に変えたんやろうな」っていう話をしていました。もちろん、オリンピック代表チームのほうが個で違いを作れる選手が何人もいました。ただ、チームとしての完成度という言い方が正しいかどうかはわかりませんが、そういった面はトゥーロンのときのほうが高かった気がします。
――なぜ、3-4-2-1のほうが嫌だと?
西村 例えば、最初から配置の時点でコンビネーションプレーが出しやすくなっているじゃないですか。わかっていても守りきれない瞬間が出てくるというか、それこそが日本の強みだと思うんです。4-2-3-1だと、即興のプレーは久保(建英)選手と堂安(律)選手のタレントに依るところが大きくて、再現性がなかったというか。だから、試合を重ねていくなかで、僕らだけじゃなく、ほかの対戦相手にとっても、ある程度守りやすかったり、見当が付くようなところがあったんじゃないかと思います。
対戦相手から見る日本の強みと弱み
――なるほど。日本の強みと弱みはどう分析されていましたか?
西村 強みとしては、まずは個人技ですよね。そこから生まれる2、3人が絡んだときのコンビネーションプレーや3人目の動き。さらに、背後を突く動き。僕らがグループステージでやられた1点目のような形です。あと、個人技を活かしたカウンターですね。日本の一番の強みとしては、この3点。一方、弱みというか、僕らがダメージを与えられるんじゃないかと考えていたのは、セットプレーを含めた球際のところ。あと、第1ラインの後ろにできるライン間のスペース。そこから芋づる式にスペースができていくところ。そしてサイド。スライドをするときに逆サイドにすごく大きなスペースができるから、素早くサイドチェンジをすれば、僕らが有利になると見ていました。
――グループステージの対戦では、開始10分で日本が2点を奪いました。この10分間を、西村さんはどう見ていますか?
西村 日本が2回のチャンスで2回決めたというか(笑)。試合映像を改めて見返したんですけど、僕らの試合の入り方はそんなに悪くはなかった。しっかりボールを運んで攻撃できていたし、守備もそこまで崩されていなかったので、ピンポイントでやられてしまったという印象ですね。
――1点目に関しては、メキシコの左サイドバックの選手の裏は分析して狙っていたようです。
西村 もちろん、背後への走り込みは十分警戒していて、試合前日にゲームプランの確認をしていたし、選手一人ひとりにも事前にマッチアップする選手の特徴を編集した映像を送っていたんです。だから、「それ危ないって言ったやん!」という形でやられてしまった(笑)。背後への動きも、ペナルティマークにダイアゴナルで入ってくる動きも、両方とも「これ、絶対やられるで」といった形でした。実際に1回やられて「あっ、ほんまにあかんねんな」ってわかってくれたんじゃないかと。だから3位決定戦では気を引き締めて、うまく守れたんだと思います。