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元日本代表・中村憲剛が“痛すぎるサウジに敗戦”を徹底分析する「柴崎岳のパスミスは起こるべくして起きた」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/10/12 11:01
サウジアラビア代表に痛い敗戦を喫した日本代表。中村憲剛氏がその敗因を徹底分析する
フレッシュな選手を投入して、攻守で主導権を取り戻す。日本からすれば勝ちたい試合ですから、先に動くのは妥当だったと思います。
9月の2試合に招集されなかった浅野は、この大一番で6月シリーズ以来のスタメンとなりました。彼は継続的に呼ばれているメンバーですが、この環境下ですぐに周囲と呼吸を合わせるのは簡単ではありません。クラブでプレーすることのあるポジションでも、代表とクラブとではタスクも変わりますので、必ずしもすぐにフィットできるわけではないものです。それでも、彼のいる右サイドからチャンスは作られていました。
日本の交代から5分後、サウジも2枚替えをしました。古橋と原口の出場で日本が攻勢に出てきたところで、エルヴェ・ルナール監督は選手交代で流れを引き戻しにかかりました。
この交代は、2連勝して日本を迎えているアドバンテージによるものだと思います。日本の動きを見て対応してきました。これがワンマッチならまた違ったのでしょうが、それまでの結果を含めての采配となるのが最終予選なのです。
柴崎のパスミスから失点「起こるべくして起こった」
失点は柴崎のパスミスからでした。やってはいけないミスだったのは間違いありません。彼を責めるのは簡単ですが、あのパスミスも起こるべくして起こったものでもあります。
もちろん柴崎のミスなのは間違いありませんが、周りのポジショニングがあの判断を選択しなくてはならないようなものでした。しかも失点シーンだけではなく、この試合全体としてそういう形が多かったので、積み重なっていった結果の失点だったと思います。
あの場面では遠藤が柴崎の横にいました。遠藤自身もパスコースに立っていましたが、よりはっきりとしたポジショニングを取っていれば、吉田麻也についていたFWは遠藤のほうへプレスバックして彼へのパスコースを切る動きをしたかもしれない。そのぶん吉田に時間ができて、バックパスができたかもしれない。
サウジが圧力をかけてきたときに、ビルドアップの枚数を増やしてプレスを回避する、周囲の選手がボールをもらえるようにもう少し動いてパスコースを確保するなど、プレスにあったボールホルダーを助ける動きがこの日の日本は十分ではありませんでした。
そこでボールを奪われたり、ショートカウンターを受けたりしたことで、オンでボールを持っているときの動きも、オフで味方を助ける動きも、少しずつ減っていきました。思考する力を、蒸し暑さに奪われていったのでしょう。後半のサウジが圧力を強めたのも、日本のプレーがスムーズでなかった要因にあげられます。 <後編へ続く>
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