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「SMBC つなげるラグビープロジェクト」。ラグビー元男子日本代表主将の菊谷崇の工夫から拡がる笑顔溢れるラグビーの輪
posted2024/11/06 15:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Yuki Suenaga
10月14日、東京都世田谷区にあるリコー総合グラウンドでは、スポーツの日にふさわしい快晴のもと、緑の天然芝の上を、大人と子どもが入り乱れ、楽しそうな声をあげて、楕円のボールを追って走り回っていた。
ここはリコーブラックラムズ東京の本拠地。駆け回っていたのは小学生とその保護者約70人。行われていたのはSMBC(三井住友銀行)が立ち上げた「SMBC つなげるラグビープロジェクト」の開会式と小学生ラグビー体験会だ。
SMBCは2014年からラグビー男子日本代表のオフィシャル・スポンサーに就任し、2020年からは、日本ラグビーフットボール協会主催の各世代のラグビー大会の協賛活動や子ども世代への普及活動をサポートしてきた。
ラグビー憲章に謳われている理念に共鳴
今回のプロジェクトは、2027年に開催されるラグビーワールドカップ・オーストラリア大会を見据え、日本代表の躍進だけでなくラグビーの更なる普及を目指すSMBCの想いから、日本ラグビー協会との共催で企画された。
プロジェクトの開会式で、SMBCの森田高氏は「ラグビー憲章に謳われているラグビーの理念は私たちSMBCが大事にしている価値観と共通しています」と挨拶した。
ラグビーの国際統括団体ワールドラグビーが掲げるラグビー憲章では、ラグビー競技を構成するコアバリュー(重要な価値)として①Integrity(品位)、②Passion(情熱)、③Solidarity(結束)、④Discipline(規律)、⑤Respect(尊敬)という5つをあげ「人間形成に資する」と明記している。
「ラグビーは、仲間と力を合わせて、情熱を持って、対戦する相手のことも尊敬して、全力を尽くして戦う素晴らしいスポーツ。このような価値観を大切にする人が増えれば、きっとよりよい社会になる。そう私たちも考え、あらゆる世代のラグビーに関わる人を応援しております」(森田氏)
ラグビーの魅力は「友達ができること」
開会式では続いて、日本ラグビー協会 最高事業遂行責任者(COO)の山神孝志氏、プロジェクトで特別講師を務めるラグビー元男子日本代表主将の菊谷崇氏があいさつをし、ラグビー元女子セブンズ日本代表主将の中村知春氏からビデオメッセージが寄せられた。
「ラグビーには走る、投げる、捕る、当たる、押す、蹴ると、すべての運動の要素が含まれている。何かが苦手な子でもどこかで活躍できる」(山神氏)
「日本中どこに行ってもラグビーの友達がいるし、海外へ行っても一緒にラグビーをすれば、言葉が通じなくても、一緒にボールを追いかけることですぐ友達になれるんです」(菊谷氏)
「ラグビーは絆を大切にするスポーツ。世界中のラグビー仲間との繋がりが私の財産です」(中村氏)
あいさつの中で、三人がラグビーの魅力としてそろって強調したのは「友達ができること」。これはラグビー関係者がよく口にする言葉だ。確かに、味方同士が身体をくっつけて、力を合わせて戦うスポーツなんて他にはない。試合が終わると、ついさっきまで全力でぶつかりあっていた選手たちが敵味方に関係なく抱き合って健闘を称えあっている。試合の後はシャワーを浴び、正装に着替えて酒を酌み交わし歓談するアフターマッチファンクションという文化もある。キャプテンは勝敗を問わずスピーチで相手チームを称える。それも「品位・情熱・結束・規律・尊敬」の賜物なのだろう――そう思うと、スポーツとは一見無縁そうな金融業界のSMBCがラグビーをサポートするのも分かる気がする。金融業の根本は信用、信頼で成り立っているのだ――。