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八村塁が“協会批判”で揺れるバスケ界「(ホーバスHCと)ボタンの掛け違いが始まったのは…」「誰かひとりが悪者というわけでもない」
posted2024/11/18 11:03
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
USA TODAY Sports/Reuters/AFLO
“この日はまるで覚悟を決めたかのように語りだした――”。現地11月13日、NBAロサンゼルス・レイカーズの八村塁(26歳)は試合後の会見で日本代表に対する思いを口にした。これまで多くを語ってこなかった八村の発言とあって、大きな議論を呼んでいる。NBA、日本代表を長く取材するジャーナリスト宮地陽子氏にその真意を読み解いてもらった。〈全2回の2回目/前編から続く〉
八村が指摘したもう1つの問題は代表のコーチ。名前こそ出していないが、現男子代表ヘッドコーチのトム・ホーバスのことを指しているのは間違いないだろう。ホーバスは東京オリンピックで女子代表HCを務め、それまでも長年、女子チームのコーチをしてきた。
ホーバスのコーチングは、厳しいことで知られる。男子代表のヘッドコーチになってからは選手の体調を見て練習量を減らしたり、選手への指示のしかたにも気を使うようになったが、それでも1日2回練習をするなど、NBA基準で考えると練習量は多かった。試合中に選手に怒鳴る場面も多く見られた。
もっとも、八村以外の男子代表選手たちからはホーバスの厳しさに対する批判は聞いたことがなく、むしろ、ホーバスのコーチングのおかげで成長できたなど、感謝するコメントが多い。表向きに批判することを抑えている可能性もあるが、ホーバスのことを信頼している選手が大半のように見えた。
構築できなかった信頼関係
ひとつ、八村が他の選手と違うのは、ホーバスとの関係が浅いことだ。他の選手はW杯予選のときからホーバスとの関係を築いてきた月日があり、信頼関係があるからこそ、厳しい指導も成り立っていたものだったのではないだろうか。八村の場合はその時間がなく、ホーバスとの信頼関係が築けたかというと、否と言わざるをえない。また、現役NBA選手という立場でリーグやチームから練習の制限もあり、それがホーバスのやり方と合わなかったという事情もあった。