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元日本代表・中村憲剛が“痛すぎるサウジに敗戦”を徹底分析する「柴崎岳のパスミスは起こるべくして起きた」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/10/12 11:01
サウジアラビア代表に痛い敗戦を喫した日本代表。中村憲剛氏がその敗因を徹底分析する
色々な条件がボディブローのように蓄積し、フィジカルだけでなく思考にもダメージとなり、後半は運動量が落ち、判断が鈍っていきました。日本のトップコンディション時の戦いに比べると、守備の迫力や圧力はサウジのほうが強く出せていた印象です。
DFラインが「いつもより5m深くなった」2つの理由
個人的には、いつもよりDFラインが深いと感じました。より正確に表現すると、深いシーンが多かったかなと。
全体をコンパクトにして前からプレッシャーをかけ、ボールを奪ったらショートカウンターを仕掛ける。ショートカウンターができない時にはしっかりとボールを握って相手陣内へ入っていくのが森保ジャパンのサッカーのベースですが、この試合に関して言えば、いつもより5mぐらい深い場面があり、そのぶんコンパクトさが欠けていました。スリーラインがコンパクトにならず、前がプレスにいっても後ろが連動できず、スペースができることで、自陣でブロックを作っても簡単に侵入され、最終ラインの手前までボールを運ばれることがありました。
全体をコンパクトにできなかった理由はふたつあると思います。ひとつは、サウジがつなぐところと躊躇なく前線に向かってシンプルに蹴るところを使い分けていたからです。日本が前からプレスにいくと、2トップへのロングボールか日本のDF陣を背走させるボールを転がして、引っ繰り返そうとしてきました。
また、DFの裏にボールを出すだけで、それがつながらなくても観客が沸くシーンが多くありました。ピッチ上の選手からすると、そういう空気感を作られるとパスがつながらなくても、「これは相手にとってチャンスなのか?」と一瞬でも考えさせられます。それはとても嫌なもの、ストレスになるものです。
もうひとつは、そのような独特な雰囲気のなかの試合だったので、先に失点をしたくないという思いがあったのではということです。前半は失点をしない戦術を取った可能性もありますが、それ以上にこの雰囲気のなかで先制されたらスタジアム全体がどういう空気になるのかを、選手たちは容易に想像できたはずです。その思いが、いつもよりラインを深めにとることにつながったのかもしれません。
最も決めきりたかった「鎌田のスルーパスから大迫」
それでも前半は、流れのなかから決定機を作らせませんでした。そのうえで、自分たちは3度の決定機を作りました。サウジもこの試合の重要さを分かっていただけに、彼らにもプレッシャーがかかっていたのかなと前半を観ていて感じました。