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広島カープ・矢崎拓也も選んだ話題の視力矯正法「ICL」とは? 眼科医に語ったリアルな感想「見えないストレスから解放されたのが大きいです」
posted2024/11/08 11:00
text by
福田剛Tsuyoshi Fukuda
photograph by
Kiichi Matsumoto
――矢崎投手は視力を矯正するために、2018年に目の中にレンズを入れるICLの治療を受けたそうですが、目はいつ頃から悪かったのですか?
矢崎 小学校の高学年頃からですね。検査で一番上の大きいマークが見えない、視力で言うと0.05くらいだったので、小学6年生からコンタクトレンズを使っていました。高校に入学してからは、眠っている間に視力を矯正するオルソケラトロジーに変えて、プロ入り後も2年目まではオルソケラトロジーを使ってました。
杉本 オルソケラトロジーはどうでしたか。良く見えていましたか?
矢崎 昼間は何の問題もなかったんです。でも、夜になるにつれて効果が薄れて見えにくくなってきます。アマチュアの頃はそれでもよかったのですが、プロはナイターがあるのでこれだとプレーできないということで眼鏡に変えました。
杉本 それまでコンタクトレンズや裸眼でプレーしていたわけだから、眼鏡独特の視界に慣れるのは難しいですよね。プレーしづらかったんじゃないですか?
矢崎 正面を見るのにはいいんですけど、セットポジションになったときに横目でキャッチャーの方を見ようとするとフレームが邪魔で見えにくいんです。だからしっかり見ようと顔の向きを正面に向けると体が開いてしまうので、フォームが崩れて投球にも影響が出てしまう。しかも汗をかくとレンズが曇る。これは眼鏡は無理だなと困っていたところに、かかりつけの眼科の先生に杉本先生を紹介してもらってICLの治療を受けることになりました。
――視力を矯正する治療には、レーザーで角膜を削るレーシック手術もありますが、ICLを選んだのはどうしてですか。
矢崎 最初はICLを知らなかったので、レーシックにしようと検査を受けました。ただ、もともとレーシックにはあまり乗り気ではなかったんです。というのも、僕が治療を考えていた頃に安全性の問題が話題になっていたり、治療を受けたのに視力が低下して2回目の手術をする人がいるという話を聞いたこともあって、正直いいイメージがなくて……。そうしたら角膜が薄くて手術ができないことが分かって、その結果、杉本先生と出会ってICLの説明を受けることになるんですけど、すぐにこれだ! と、決めました。
杉本 レーシックには一定の割合で「近視の戻り」が生じることが分かっており、10年という長期でみれば、大きく視力が低下することがあります。また、同じ視力でもICLとレーシックには違いがあって、レーシックは見え方の質が低下するのに対し、ICLはクリアに見えるという特徴があります。レーシックにはコストが安いというメリットはありますが、治療の有効性、安全性ともにICLのほうが高いので、現在、日本では近視矯正手術を受ける方の80%がICLを選択しています。ちなみに僕の目にもICLが入っています。
矢崎 レーシックは角膜を削りますよね。あれも抵抗がありました。削ってしまったら元には戻らないけど、ICLは万が一レンズが自分に合わなかったら、入れたレンズを取り外せば元に戻せる。しかも、年を取って目の病気になり手術をしなくてはいけないとなったときも外せばいいだけなので問題ないという話を聞いて、すごく腑に落ちたというか、納得できました。
杉本 とはいえ、ICLでは手術が必要で、目の手術と聞いて不安に感じる患者さんもいますが、その点はどうでしたか?