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大阪桐蔭・西谷監督の本音「気にしないようにはしてますけど…」高校野球“飛ばないバット”で異変…大阪桐蔭を“秋に倒した”チームも「優勝候補はどこ?」
posted2024/08/06 17:16
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Nanae Suzuki
低反発バット元年――。
2024年の高校野球シーンは、この言葉から逃れられない。今春のセンバツから導入され徐々に適応する選手も見られたものの、初年度のこの夏もその影響を受けるチームは多そうだ。
西谷監督の本音
「気にしないようにはしてますけど、違うなというのは感じています。前のバットだったら(スタンドに)入ってると思う時はありますからね。バットのことは考えないようにはしていますけど」
矛盾しているような、それでも多くの指導者から賛同を得られるような表現で語ったのが大阪桐蔭の西谷浩一監督だった。
打てるようになってきているが、これまで通りとはいかない――そう要約できるだろう。攻撃力を売りにしてきたチームの本音ではないだろうか。
大阪大会での大阪桐蔭に、その影響が如実に表れていた。これまでは試合序盤から攻撃力を前面に出して試合の主導権を握っていく戦い方だったが、今年は「圧倒しきれない」現実があった。5回戦、準々決勝とも3回までに4点を先取してワンサイドゲームの様相だったが、追加点を奪えないでいるうちに反撃を浴びて9回まで試合を演じた。
あと一歩のところで加点ができない。力の差はあれどどこか圧倒しきれない戦いが、今年の大阪桐蔭、いや全国の強豪に共通していたのではないか。
「戦い方を変えた」大阪桐蔭
その中で大阪桐蔭が殻を破る鍵はライバル校の履正社にあった。
大阪桐蔭の橋本翔太郎コーチは「バットが低反発になっている中で、履正社のようにやるのも一つの考えなんだなと参考になりました」と言った。つまり、長打を捨てて、短打と走塁で、大阪大会準決勝まで勝ち上がってきたライバルから学んだというのだ。準決勝の履正社戦、結果から見れば5回コールド勝ちだったが、大阪桐蔭の打撃スタイルは明らかに単打を意識したものだった。「やる限りは理想の打撃を追いかけたい」とロマンを語る一方で、トーナメントを戦う上では「どんな打撃をしていくかは難しい問題」と西谷監督は話す。