甲子園の風BACK NUMBER
高校野球“7回制”の賛否割れた…金足農から大阪桐蔭まで“監督ポツリ”意外な本音「9回制より守りたいのは…」「部員減の高校チャンス」揺れる現場
posted2024/08/07 06:01
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph by
Hideki Sugiyama
意外だった。質問することができた監督は7人だから、これが高校野球の現場の総意とは言い切れない。だが、「7イニング制が検討されている」ニュースについて見解を尋ねると、賛否ありながらも一様に冷静だったからである。
西谷監督「スポーツの本質が変わる」
高校野球の「暑さ」と「選手の疲労」。次なる対策を考えるとすれば、3つの案が浮かぶ。開催場所を変えるか、開催時期をずらすか、あるいは「9回から7回制」に変えることで“選手の日照時間”を減らすか。
「そういう時期が来るだろう、という予感はあった」
言葉を選びながら、迷う心境を率直に吐露したのは花咲徳栄の岩井隆監督(54歳)である。2017年に夏の甲子園を制し、昨夏はすでに7回制が導入されているU-18(高校野球の世界大会)で、日本代表のヘッドコーチを務めた。
「私が生まれてから今まで、野球は9回だと。そういうものとして育ってきたから。U-18でも経験しましたけど、これまで3回、3回、3回でそれぞれ序盤、中盤、終盤と言われたきた野球で、終盤が事実上消える。相手投手に球数を放らせて後半勝負、という野球はなくなるでしょう。その意味では、7回となると違和感はありますよ」
岩井と同い年の大阪桐蔭・西谷浩一監督も同調する。
「スポーツの本質が変わるので。前半、ポンっていったら(複数点が取られたら)、そのまま試合が終わってしまう気がしますね。これまでずっと(給水タイムやクーリングタイムなどで)努力してきたので。他の部分で変えられるんじゃないか、そんなに急いで変えなくても……と思います。2イニングくらい、できるんじゃないかなと」
今年で106回大会を迎える夏の甲子園はすべて9回制で行われてきた。その意味ではゲームの根幹が変わるといっていいだろう。
岩井監督が明かす“7回制のメリット”
一方で、7回制を否定しきれないメリットもある。再び岩井の発言。