プロ野球PRESSBACK NUMBER
立浪和義が吐露していた「現場と外はちゃうんや…」あの天才が中日監督でなぜ苦悩? PL学園の盟友が明かす「タツが苦しんでるのは…」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/12 11:00
勝負の3年目を迎える中日・立浪和義監督
「やはりタツが監督として苦しんでいるのは攻撃面でしょう。プロ野球であれほどの大打者だったわけですから、率いる選手たちのことを“どうしてできないんだ”と歯がゆく思うのは仕方ないかもしれない」
立浪の就任以来、野村の春季キャンプ視察は中日からスタートしている。そして必ず高校、そしてプロと苦楽を共にしてきた同級生の「タツ」とふたりだけの時間を作り、こう訊ねるのだ。
「何位や?」
毎シーズン、開幕前に評論家として全球団の予想順位を公表しなければならない。再建過程にある中日だけは、監督である立浪の意見をそのまま自身の予想順位としている。
「1年目の予想順位は2位でした。1年目のキャンプで、タツが期待の若手として真っ先に名前を挙げたのが高卒3年目となる岡林(勇希)だった。『あいつはやるぞ』と。2022年シーズンの岡林は最多安打(161本)で、23年もそのタイトルに手が届きそうだった(163本)。やはり、選手の能力を見極める眼力はタツに備わっていると思う。(2018年ドラフト1位の)根尾(昂)にしても、(2021年ドラフト2位の外野手である)鵜飼航丞にしても、同じようにタツは期待していると思います」
根尾昂らの育成「狭間でタツも戦っている」
名前の挙がった根尾は、現役時代に遊撃手だった立浪のいわば後継者として入団した。だが、入団1年目の根尾の守備を見た野村の目にはショートが適正ポジションとは思えなかった。
「2019年のフレッシュオールスターで、根尾と広島の小園(海斗)が同時にショートでノックを受けていた。ふたりを見比べた時に、守備範囲やスローイングの面で、根尾にショートは無理ではないかと感じたんです。ピッチャーだった自分ですらそう思うんだから、ショートが本職だったタツも感じていたのではないでしょうか。内外野できるという触れ込みでドラフト1位入団したわけですが、外野の守備にも不安がある。マウンドに上がれば、150キロを超えるストレートを投げるんだから、根尾には投手しかないと結論づけたのかもしれない。根尾が1年でも長くプロで活躍するための配置転換だったと思いますし、しっかり話し合った上での結論だと思います」
ようやく投手らしくなってきた――根尾に対する評価を立浪が口にしたのは2023年の春先だ。