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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
“最も巨人を勝たせた監督” はV9川上でもONでもなく…原辰徳1291勝に浮かぶ“大型補強+育成を両立の難しさ”〈イチロー、ダルらとWBC優勝〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/10/05 20:01
2023年、リーグ最終戦での原辰徳監督。21世紀の巨人軍監督と言えば、この人物であることに異存ある人はほぼいないだろう
【2020年 67勝45敗8分 勝率.598(1位)】
コロナ禍で6月に開幕したこの年、岡本和真が31本塁打97打点で二冠王に、丸、坂本に加え吉川尚輝も規定打席に到達。投では菅野智之が14勝で最多勝、MVPにも輝く。阪神に7.5差をつけた。CSが中止となり、日本シリーズでソフトバンクと再戦するも4連敗で2年連続敗退。セ・パの実力差が開いたという印象を与えた。
2020年オフ、DeNAから梶谷隆幸、井納翔一がFA移籍した。
原巨人で久々の負け越し、3年連続のV逸
【2021年 61勝62敗20分 勝率.496(3位)】
3位に終わったこともさることながら、原監督のキャリアで2度目となる負け越しもショッキングなことだった。シーズン中に中田翔が日本ハムから移籍し、岡本和真が39本塁打113打点で二冠王に輝き、坂本、松原聖弥、丸が規定打席に到達、打線は悪くなかったが、投は高橋優貴が11勝、戸郷翔征が9勝したもののエースの菅野が6勝。それ以上にクローザー、セットアッパーによる勝利の方程式が作れなかったのが痛かった。CSファーストステージは阪神を2勝0敗で破るが、ファイナルステージはヤクルトに0勝3敗1分で敗退した。
【2022年 68勝72敗3分 勝率.486(4位)】
2年連続負け越し、しかもCSに進出できず。丸がフル出場、岡本も30本塁打を打つなど打線は弱くはなかった。また投手陣も戸郷が12勝、菅野が10勝、大勢が37セーブと一応陣容は整っていたが、村上宗隆など伸び盛りの戦力のヤクルトと比べれば明らかに見劣りがした。
2022年オフ、楽天のオコエ瑠偉が現役ドラフトで移籍。
【2023年 71勝70敗2分 勝率.504(4位)】
新戦力が大活躍した阪神がぶっちぎりで優勝する中、2年連続でBクラスとなったが最終戦で辛うじて勝ち越す。岡本和真が本塁打王を確実にしている。また長身の新鋭・秋広優人も躍進。本塁打数はリーグ1位だが、チーム防御率は5位、戸郷が12勝を挙げて山﨑伊織も最終戦で10勝に到達。一方でクローザー、セットアッパーが定まらず、勝敗が半ばしたが、若手は成長の兆しを見せた。原監督は退任を発表。後任は阿部慎之助一軍ヘッド兼バッテリーコーチとなる。
NPBでは2020年以降もFA移籍で毎年大物選手が移籍しているが、そうした選手が巨人を選ばなくなっている。大物選手をポジションが被っても補強するような姿勢を選手側が忌避しているのではないかと推測される。若手の躍進はあるが、オリックスのように思い切った抜擢はどうしても少なくなり、新陳代謝はゆっくりとしか進まない。
〈巨人の歴代監督勝利数5傑〉
原辰徳17年2407試合1291勝1025敗91分 勝率.557
優勝9回日本一3回
川上哲治14年1868試合1066勝741敗61分 勝率.590
優勝11回日本一11回
長嶋茂雄15年1982試合1034勝889敗59分 勝率.538
優勝5回日本一2回
水原茂11年1407試合881勝497敗29分 勝率.639
優勝8回日本一4回
藤田元司7年910試合516勝361敗33分 勝率.588
優勝4回日本一2回
とはいえ原監督は、選手実績では及ばなかった川上、長嶋、王などを抜いて在任期間、勝利数でトップに立った。
キャリアの最後は、優勝で飾りたかっただろうが――多難な時代のかじ取りをした名監督だったのは間違いない。<第1回から続く>