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岡田彰布、原辰徳、立浪和義…“名選手、名監督にあらず”は本当か? 名将・野村克也が語る「上手に戦う指揮官がやっていること。それは…」
posted2023/09/23 11:03
text by
野村克也Katsuya Nomura
photograph by
Tamon Matsuzono
プロ野球のレギュラーシーズンも最終盤に入った。優勝を決めたチーム、躍進著しいチーム、低迷するチーム……。選手たちを率いて戦う指揮官の1年間の“採点”が出揃う時期でもある。あえてこの時期に問いたい「名監督とは何なのか」ーー。今年8月に発売された故・野村克也氏の“門外不出の野球ノート”とも言える著書『野村克也 野球論集成 実技講座』(徳間書店、2023年8月発行)から抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から読む)
野球には「名選手、名監督にあらず」という意地悪な言葉がある。
実際には、現役時代に名選手であっても、平凡であっても、指導者になった後の成長や個性は千差万別だし、一長一短があると思う。
選手を過小評価しがちな「名選手」出身監督
「苦労人」と呼ばれたような指揮官は、ベンチの控え選手の気持ちを思いすぎる傾向がある。レギュラーに育てたい若手が低迷してくると、ベンチで出番を待つ選手にチャンスを与えてしまう。結果、本来育てるべき選手の成長を促せないことがある。その点では、不動のレギュラー、名選手として実績を積んだ指導者の方が向いているともいえる。
一方、「名選手」は現役時代の自分と比較しがちで、その結果、選手を過小評価してしまうこともある。1984年、巨人・王貞治監督は就任1年目で3位に終わった。当時売り出し中だった左打者の吉村禎章の打撃練習を見ながら、私は「ワンちゃん、腰を据えて吉村を使ってみたらどう?」と、投手の左右にかかわらずレギュラーに推したことがあった。王監督は「ノムさん、巨人には優勝という命題があって、そう簡単にはいかないんですよ」と笑っていた。