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高校駅伝5年前の奇跡「えっ? 何が起きたの?」1年生が号泣…“偏差値68”県立進学校が駅伝全国6位の私立高に逆転勝ち、全国大会に行った日
posted2023/03/07 11:02
text by
山崎ダイDai Yamazaki
◆◆◆
長距離部員が約10人しかいなかった
「全国に行ける可能性は、現状30%くらいだと思う」
2018年の全国高校駅伝(都大路)への出場権をかけた静岡県予選の前日のこと。宿舎で韮山高校監督の川口雅司が、部員たちにふとこぼしたそんな言葉は、思わず口をついた本音だったのだろうか。
「だいたいそんなもんかなと思いました。どうしても他の優勝候補校と比べると、韮山の層の薄さは否めなかったですから。まぁ半々ではないよなぁと」
主将を務めていた小澤大輝も、そう同調する。
韮山は静岡県内でも有数の県立進学校である。毎年10人近い東大・京大合格者を輩出し、学年の半数以上が国公立大へと進学する。特に理数科は県内トップクラスの偏差値(68、普通科は66)を誇り、スポーツ推薦制度も当然ない。
そんな“超”のつくような進学校の陸上部が、この年、初の都大路出場を射程圏内にとらえていた。小澤に加え、小木曽竜盛、河田太一平の主力3人が1万mで29分台という高校トップクラスの記録を叩き出していたからだ。3人はいずれも中学時代から全国大会に出場し、実績を残してきたランナーでもある。
ただし、小澤の言うように3人以外の選手の実力は、他の県内トップ校から大きく水を空けられていた。長距離部員の数も10名強しかおらず、高校生ランナーの基準となる5000mの記録でも15分台後半の選手を半分近く起用せざるを得ない状況だった。
ライバルは前年の全国高校駅伝で6位
3本柱のひとりである小木曽が振り返る。
「監督からは(静岡県予選で)僕たち3人が走り終わる4区が終わった時点で、『後続と1分30秒は開けないと厳しい』という話をされていました」
実力のある3人にとっても、これは決して簡単な数字ではない。
最大のライバルとなるのは、強豪私立の浜松日体高だった。同校は前年の全国高校駅伝で6位に入賞した強豪で、西澤侑真(後に順大。今年の箱根駅伝10区区間賞)や鈴木創士(後に早大。今季の主将)といった有力ランナーを擁していた。
それを高いとみるか低いとみるかは難しいところだが、ともあれ3割の勝率を追いかけて韮山の勝負は幕を開けることになった。