県予選とは少しオーダーを組み替えた。その意図を小木曽が解説する。

「都大路では県予選より前へ行く流れが重要だということで、エースの小澤を1区に配置しました。上りの多い3区は僕が強いだろうということで3区に回って、河田が4区にいったという感じでしたね」

　エース区間を任された小澤は、密かな自信を持っていたという。

「実はこっそり区間賞争いくらいできるんじゃないか……と思っていたんですけど、やっぱり全国は甘くなかったですね。思ったより後ろの位置での襷渡しになってしまいました」

　とはいえ入賞圏内まで20秒差の14位という走りは、初の全国区での駅伝の走りとしては及第点だっただろう。

　ただ、3区の小木曽にとってはその順位は予想外のものでもあった。

「襷を受ける前に小澤が14位と聞いて、『いやあ、全国ってめちゃくちゃレベル高いなあ』と思いましたね。前年入賞したチーム（浜松日体高）のいる静岡県内で、トップクラスに強かった小澤でもそういう順位だったので正直、面食らいましたね」

　それでも小木曽も準エース区間で踏ん張り区間19位。順位を1つ上げて13位で河田へと襷を繋いだ。

奇跡は2度起きなかった

　4区を走った河田は大舞台での強さを存分に発揮し、区間9位。総合順位もさらに1つあげて12位まで押し上げた。

「欲を言えば河田が終わった時点で、1ケタ順位で後半区間に襷を渡したかったんですが、なかなか甘くなかったです。もちろん細かな反省はありますけど、なんとかギリギリ目標達成が見える位置だったかなと思います」（小澤）

　4区を終えた時点で目標の入賞ラインまでの差は40秒。前を行くチームがどこかで少しでもミスを起こし、後半区間で県大会のような会心の走りを見せれば、ひょっとすると入賞も――という展開である。

　ただし、奇跡は2度起きないから奇跡と言うのだろう。

　県予選ですべてを出し尽くした後半区間の選手たちは、一様に区間下位の順位を彷徨うことになる。裏を返せば、いかに県予選の走りが特異なものだったのかの証左でもあった。

　こうして、最後の最後までマンガのような話だったこの年の韮山高校初の都大路は、19位という順位で幕を閉じた。

　小木曽は、高校生活最初で最後となった晴れ舞台を振り返って、こう苦笑する。

「良くも悪くも、みんな都大路が実力通りの走りだったと思います（笑）。いま振り返ると、本当に全国に行けたのがフィクションみたいな話でしたから――」

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