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高校駅伝5年前の奇跡「えっ? 何が起きたの?」1年生が号泣…“偏差値68”県立進学校が駅伝全国6位の私立高に逆転勝ち、全国大会に行った日
text by
山崎ダイDai Yamazaki
posted2023/03/07 11:02
2018年12月の全国高校駅伝。静岡県代表として都大路を走った韮山高校(写真は3区の小木曽竜盛)。偏差値66~68の超進学校がなぜ、全国の舞台に辿り着けたのだろうか?
練習でもロング走では小木曽や小澤が歯が立たないほどの強さを見せていたという。故障も少なく、体の強さという才能もあった。そして、何より不思議と大勝負の場面では無類の強さを見せた。
この日も、浜松日体のエースで5000mのタイムでは30秒以上河田よりも良い記録を持っていた鈴木相手に食らいついた。だが、差を詰めるには至らず、4区のエース・小澤に襷が渡った時には、先頭との差は実に48秒まで開くことになる。
4区で「15秒」差までひっくり返したが…
この時点で、レース前に描いた4区終了時で「1分30秒差をつけての先頭」というビジョンは、現実的にほぼ達成不可能になっていた。
「48秒差は正直、相当厳しかったです。そもそも追いつけるのか……というレベルでしたし。でももうこうなったら最初からツッコむしかない。とにかくハイペースで行けるところまで行きました」
小澤は、見えない相手の背中を必死に追いかけた。
そこには、中学時代に全中で入賞した経歴を持ちながら、高校ではここまで全国の舞台で輝き切れなかった小澤の執念もあった。
「中学時代は同じレースで戦っていた選手たちが、都大路やインターハイの決勝で活躍しているのに、自分はその舞台にすら立てていない。なんとかそこに戻らないと……という焦燥感は抱えていました」
高校3年間で残されたチャンスはあと1度しかない。
ここで悔いを残すわけにはいかなかった。小澤は48秒あった浜松日体との差をひっくり返し、逆に15秒の差をつけてみせる。それは、まさに“エース”の走りだった。
ただし、それでも差は「15秒」だ。目標の1分30秒には遠く及ばない。
3本柱が走り終えて、最後に残った差はそれだけだった。韮山は圧倒的窮地に追い込まれていた。
「あれ?」「ほんとに奇跡が起きた気持ちでした」
小木曽が言う。
「結局3人で15秒しか差をつけられませんでしたから。後半のランナーは5000mで15分台後半の記録しか持っていない下級生でしたし、すぐその貯金はなくなるだろうと。正直、この時点で全国はかなり厳しいと感じていました」