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「絶対に全国高校駅伝なんか無理だぞ」“偏差値68”県立の超進学校の奇跡…部活では“超無名”、なぜスポーツ推薦ゼロで全国大会に行けた?
text by
山崎ダイDai Yamazaki
posted2023/03/07 11:01
2018年の韮山高校陸上競技部(写真は小沢大輝)。同年の全国高校駅伝、静岡県代表として都大路を走った。偏差値66~68の超進学校がなぜ、全国の舞台に辿り着けたのか?
「基本はみんなで一緒に練習して、きつそうな子がいたら声をかけながら練習をしていました。ジョグも基本は各自じゃなくて全員でやりましたね。部員同士の仲が良かったのは韮山の強みだったと思います。走力関係なくギスギスしていなかったですし、選手同士の会話も多かった。同じ練習をすれば、走力が高いぶん自分たちがアドバイスをするケースが増えます。でも、いろいろ言った以上は自分もやらなければいけない。そういう意味でもモチベーションを保つきっかけになったと思います」
野球部と一緒にお寺の坂道ダッシュ
また、駅伝強豪校ではないからこその良さもあったという。
「短距離と一緒に練習することもありましたし、年に1度は野球部と一緒に学校の裏にあるお寺の坂でダッシュするイベントもありました。野球部に走りで負けるわけにはいかないので必死でしたよ(笑)。野球部からも『駅伝、頑張ってよ』とか言ってもらえて、ああいうのはいわゆる駅伝強豪校にはない、公立校ならではの練習だった気がします」
そんな風に独特な手法で少しずつ力をつけた韮山高校陸上部だったが、やはり強豪の壁は厚い。
1年目、2年目ともに高校駅伝の県予選は5位。全国など、まだ夢物語の順位だった。さらに3人が2年生だった2017年には、静岡代表として都大路に出場した浜松日体高が6位入賞を果たす。ライバルも、着実にレベルアップしていた。
「このままじゃマズいよ。絶対都大路なんか行けない」
そうして迎えた高校最後のシーズン――。
小澤と小木曽はそれぞれ5000mと3000m障害でインターハイに出場、河田も2種目で東海大会までコマを進めるなど、地力がついてきたことは実感していた。ただ、それだけで全国という夢舞台が近づいたと思えるほど、当時の静岡県予選は甘い世界でもなかった。
大きくチームが変わったのは、夏ごろのことだったという。小澤が振り返る。
「夏合宿の時に川口先生から『このままじゃマズいよ。絶対都大路なんか行けない。現状じゃ可能性は数パーセントしかない』みたいなことを言われて。それは今でも覚えています。そこでみんなガラッと思考が変わったし、本気で都大路を目指すようになりました」
小木曽も夏からの部員たちの「意識の変化」が大きかったと言う。