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「絶対に全国高校駅伝なんか無理だぞ」“偏差値68”県立の超進学校の奇跡…部活では“超無名”、なぜスポーツ推薦ゼロで全国大会に行けた?
text by
山崎ダイDai Yamazaki
posted2023/03/07 11:01
2018年の韮山高校陸上競技部(写真は小沢大輝)。同年の全国高校駅伝、静岡県代表として都大路を走った。偏差値66~68の超進学校がなぜ、全国の舞台に辿り着けたのか?
全体練習は授業後の2時間程度。寮があるわけでもなく、日々の授業の予習復習もあり、練習もコンパクトにせざるを得ない状況だった。校庭には250mのトラックが申し訳程度にあったものの、野球部とサッカー部との併用で、ボールが飛んでくることもしばしばだったという。
入学して1年が経ち、ようやくそんな生活になれてきた頃には、また別の課題が持ち上がった。スポーツ推薦のない普通の県立高ゆえ、チーム内での実力差が大きくなってしまったのだ。
「入学当初はたまたま3年生に、後に箱根駅伝も走ったような有力ランナーの先輩たちがいたのでそれほど問題はなかったんです。でもその代が抜けると、僕と小澤、太一平の3人のタイムと他の選手の記録がだいぶ離れてしまうようになりました」(小木曽)
努力の要素が大きいと言われる長距離競技であっても、やはり才能の壁というのは存在する。2年時にはすでに高校生ランナーの基準となる5000mで14分台半ばの記録を出していた3人に比べ、“壁の手前側”にいるそのほかの部員は15分台に届くかどうかといったレベルだった。
「毎朝7時、学校まで10km走った」
ただ、それでも練習を実力別で分けるようなことはしなかったという。
そもそも長距離部員が10人強しかいなかったということもあるが、それだけではなく、そこには彼らなりのこだわりがあった。小澤が振り返る。
「やっぱり駅伝ってチーム競技なんですよ。力のある選手もない選手も、できるならみんなで一緒に練習した方が絶対に良い。そうやって過ごした時間は、絶対に駅伝での最後の力の振り絞り方に影響してくる。やり方は難しかったですけど、顧問の川口(雅司)先生が上手く考えてくれたと思います」
一例を上げれば、徐々にペースを上げるビルドアップ走では、最速ペースを3分20秒/km、2分50秒/kmなど力ごとに3ランクに分けたが、必ず3ランクで一緒に走る時間を設定した。また、先に離脱する遅いランク設定の選手たちには、離脱する直前にペースを上げて速い設定の選手を抜き、最後はトップに立って終わるような手法も採用したという。他にも、それまでは「喋っているだけで終わってしまうこともあった」(小澤)という各自での補強メニューも統一し、全員で行うように徹底した。
「あとは朝練習を『各自でいいから何かしらやろう』というのも言いました。僕と太一平は毎朝7時に駅で待ち合わせて、荷物を先生に車で運んでもらって学校まで10kmくらい走っていました。小木曽は家が遠かったので、自転車で30分くらいかけて学校まで来て、そこで時間があれば他の部員と走るような感じで」(小澤)
そうして各自の走力アップと並行して、チームとしての結束力も高めていった。小木曽も述懐する。