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「日本は当然のようにアジアNo.1の地位を」J2長崎新スタジアムに感動…トルシエが本音で語る「言いたいのはモリヤスのマネジメントに関してだ」
posted2025/04/13 17:01

来日したトルシエの心を打った日本サッカーの一例として、新スタジアムができたV・ファーレン長崎の取り組みがあるという
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
フィリップ・トルシエインタビューの第2回である。
サッカー人気の停滞は代表人気の停滞であり、その最大の原因は日本代表がW杯ベスト16の壁を突破できていないからだとトルシエは言う。たしかにトルシエに率いられた日本代表が、2002年に初めてベスト16に進んで以降、日本は4度にわたりベスト16の壁に跳ね返された。それが人々のエネルギーと熱気を、行き場のないものにしていると。
逆にJリーグは、100人以上の選手を主にヨーロッパへと送り出しながら、クラブは地域のアイデンティティを担い、健全な発展を遂げている。その例がスタジアムを中心とした地域文化を築きあげようとしているV・ファーレン長崎の試みであると彼は評価する。
長崎はとても斬新なコンセプトだ
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――あなたは日本各地のサッカーを訪問して「世界で起こっていることと違いはない」と話していました。
「何より、日本サッカーはいい状態にある。Jリーグは活気がありスタジアムもピッチも素晴らしい。人々は電車や地下鉄、バスなどの公共交通機関を使ってスタジアムに簡単に足を運び、家族でスタジアムを訪れる。レプリカユニフォームを着たサポーターでスタンドは溢れている。サッカーのポジティブな要素のすべてがそこにはある。私が見たのはガンバ大阪vs清水エスパルス(3月8日)だが、スタンドは満員で本物のサポーターで埋め尽くされていた。サポーターの熱意が冷めているとは私には思えなかった。
またクラブはサッカーだけでなく、地域のアイデンティティを体現し、その街のカラーになっている。今日の日本サッカーには、クラブレベルのアイデンティティが各地域に存在する。素晴らしいことで、日本サッカーは下降曲線を辿っておらず、その逆だと感じた。クラブが地域を体現し、そのことにサポーターは誇りを感じている」
――長崎の印象はどうでしたか。最新のスタジアムと周辺地域の複合・コンプレックスという新しい形態を作り出しましたが。
「サポーターが集うための新たな形態を彼らは築いたが、たんにサポーターだけのためのものではない。地域の人々が肺のような活力源の周りに集まって来る。肺は呼吸の器官であり生命そのものだ。長崎のスタジアムは〈本物の肺〉で友人たちが集う場であり、それはサッカーでの友人ばかりでなく、親密な人々の集いの場でもある。そこで買い物や食事をしたり、お茶を飲んで談笑する場だ。勉強すらできる、本物の出会いの場といえる。そして週末になると、サッカーの公式戦が開催される。とても斬新なコンセプトだ」
スタジアムの存在が理念を具現化しようと
――その点でとても注目されています。