「やっぱり自分たち含めてみんな『都大路に行きたい』とは言っていましたけど、それまでどこか現実的に捉えられていなかったんだと思います。ようやく3年目の夏に自分たちがインターハイに出たり、みんなの自己ベストが上がってきたりして、『行きたい』から『自分たちで行くんだ！』という主体的な思いに変わってきたような気がします」

　普通の県立高ゆえ、どうしても頭をもたげてくる「強豪校には勝てなくても仕方ない」というバイアス。この年の韮山は3人が前を引っ張り、その姿を他の部員も目の当たりにすることで、その偏見をチーム全体が払拭できたのが大きかったのだろう。

「練習内容自体はそれまでと大きく変わったわけではないんですけど、夏以降、明らかに練習への集中力が上がりました。僕ら3人は陸上推薦で大学への進学が決まっていたので当然なんですが、それ以外の部員たちも本当に目の色を変えて頑張ってくれたと思います」（小澤）

　そして県予選を翌月に控えた10月の日体大記録会で、小澤、小木曽、河田の3人が1万mでそろって29分台をマークする。まだ厚底シューズの恩恵が大きくなかった時代に、この記録は高校生として全国でもトップクラスのタイムだった。

　高校駅伝は42.195kmを7人で繋ぐが、1区、3区、4区の長距離区間がその6割以上を占める。つまり、有力ランナーが「3人」いるということは、それだけで圧倒的優位に立てることを意味していた。

　そして2018年の11月4日、都大路をかけた運命の静岡県予選の日を迎える。

＜続く＞

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