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「歓喜」なのか「奇跡」なのか…誰もが「手のひら返し」で熱狂した喜怒哀楽あふれるW杯グループリーグの報道を読み比べ 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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posted2022/12/05 11:01

「歓喜」なのか「奇跡」なのか…誰もが「手のひら返し」で熱狂した喜怒哀楽あふれるW杯グループリーグの報道を読み比べ<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

コスタリカ戦後の各紙の一面……世間の喜怒哀楽と同様に、スポーツ紙の感情も揺れに揺れていた

 その長友はますます士気を高めていた。同日のサンスポ一面はこちら。

『スペイン弱点 長友「見えた」』(11月29日)

《大会前から髪を金色や赤に染め、初戦の勝利後には「ブラボー!」と連呼。今大会、とにかく目立ってきたベテラン》は自身のSNSでこう宣言。

「グループリーグ突破してまたどでかい声でブラボー言ったるからな」

 そして迎えたスペイン戦の翌日(12月3日)。

『死の組首位突破 日本 どや堂安 2発目同点弾』(日刊スポーツ)

『世界に勝った!!森保JAPAN 1ミリの執念 三笘Vアシスト』(スポーツ報知)

『ドーハの奇跡再び 日本列島 暁の歓喜』(サンケイスポーツ)

『世界の伝説へ 森保JAPAN もう奇跡じゃない!!列島早朝の歓喜16強』(スポーツニッポン)

『スペイン撃破!!2大会連続決勝T 森保J 新時代』(東京中日スポーツ)

『1位突破 森保日本 ブラボー16強』(デイリースポーツ)

 スペインに勝った。スポニチの「もう奇跡じゃない!!」が印象的。

日本躍進の影に猪木魂

 こうして振り返ってみるとW杯開幕前に象徴的な記事があった。11月17日に日刊スポーツが『森保継承 猪木魂』とぶち上げていたのだ。

 なぜ猪木? 実はこの日におこなわれる国際親善試合カナダ戦の舞台は10月1日に死去したアントニオ猪木さんが生前、死闘を繰り広げたアルマクトゥームスタジアムだった。一面記事にするにはあともう一押しと考えたか、次は猪木の名言「出る前に、負けること考えるバカがいるかよ!」に記者は注目。

 監督に当時の映像を見せたのだろう。森保監督は、 

《改めて、勇気というか自信をもらった。戦う前、全ての結果を受け止められる準備はしておく必要はあるが、今の選手の力をもって、チームと個の力を発揮できれば、結果は付いてくると思っている。》

 と真面目に答えた。これで『森保継承 猪木魂』見出し完成である。ネタ的に思えた見出しだが今こうして読んでみると確かに1次リーグの日本は下馬評に対して「出る前に、負けること考えるバカがいるかよ!」だったのかもしれない。

 以上、日本代表のグループリーグのスポーツ紙読み比べでした。

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