月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
「歓喜」なのか「奇跡」なのか…誰もが「手のひら返し」で熱狂した喜怒哀楽あふれるW杯グループリーグの報道を読み比べ
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/12/05 11:01
コスタリカ戦後の各紙の一面……世間の喜怒哀楽と同様に、スポーツ紙の感情も揺れに揺れていた
イケイケのお祭ムード一色の中で迎えたコスタリカ戦。しかし日本は敗れた。翌日(11月28日)のスポーツ紙は悲痛。
『大誤算 日本 勝ち点3のままスペイン戦』(日刊スポーツ)
『不発森保監督 奇跡再びスペイン倒すしかない!!』(スポーツ報知)
『スペインに勝て!!森保ジャパン』(サンケイスポーツ)
『森保JAPAN 3つの誤算』(スポーツニッポン)
『スペイン戦にすべてを懸けろ 日本決勝Tピンチ』(東京中日スポーツ)
『痛恨黒星で運命の12・2スペイン戦へ 森保日本 勝て!!』(デイリースポーツ)
勝って当然?だったコスタリカ戦報道
一戦一戦で感情が劇的に変わるのはW杯の醍醐味だろうが、監督や選手は大変だ。一方で私が気になったのは各紙のこれらの見出し。
『勝つべき相手コスタリカに0-1』(日刊スポーツ)
『コスタリカに負けるなんて』(スポーツ報知)
『ドイツに勝ったのにコスタリカに負けた』(スポーツニッポン)
ちょっとコスタリカを舐めていた? 報じる側も、我々も。ドイツに勝ったことで気が大きくなっていたのかもしれない。それぞれの見出しを眺めて感じた。
初の16強を知る元日本代表監督の岡田武史氏はスペイン戦へ「勝てば真の成長を遂げた証明になる」と期待(日刊スポーツ11月29日)。コスタリカ戦の振り返りでは引き分けOKの「したたかさ」を国として身につける必要性も説いた。
《選手には世界で勝つためマリーシア(ずる賢さ)を求めながら、チームに対しては協会も国民も「正々堂々やって勝て」の雰囲気。トータルで考えればドローでOKなのに。(略)途中から「勝ち点1でいい」と割り切って良かったかもしれない。コスタリカを「絶対に勝つべき相手」と位置付け、悲壮感まで漂わせたことがおかしかった。》(岡田武史氏)
締めの言葉は、
《あとは「長友の『ブラボー』に期待」と書いておいてくれ。とにかく今できることをやる以外にない。「やるしかねえんだから、やりゃあいいんだよ」の言葉で送り出したい。》